デジタル庁は2021年9月17日、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種証明書(以下、証明書)の電子申請・電子交付に向けた仕様案を公開し、意見募集を始めた。現状は海外渡航者向けに紙の証明書を発行しているが、2021年中にもスマートフォン上で2次元コード付き証明書を表示できるようになる見込みだ。国内での証明書を様々なシーンで活用できるようになりそうだが、一方で証明書の発行タイミングについては懸念もある。
VRSとデータを連携
ワクチン接種証明書の制度は内閣官房副長官補室が取りまとめている。今回の電子申請・電子交付は、デジタル庁が新システムの企画から開発、運用までを担当する。同日デジタル庁が公開したのは、2次元コード付き証明書の仕様案と、接種情報取得API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の仕様案である。
前者の2次元コード付き証明書は、スマホアプリから申請・取得する。具体的には、スマホで接種証明書アプリをダウンロードし、スマホにマイナンバーカードをかざしたうえで4桁の暗証番号を入力して申請する。個人の接種記録は、デジタル庁が運用する「ワクチン接種記録システム(VRS)」でマイナンバーとひも付けて記録されているため、新システムがVRSの接種情報を確認して、スマホアプリ上に2次元コード付き証明書を交付する。
2次元コードに含まれる情報は「漢字氏名」「生年月日」「ワクチン名・メーカー名」「ロット番号」「接種日」「証明書ID」「発行日」である。海外渡航向けにパスポートを登録する場合は「ローマ字氏名」「国籍・地域」「旅券番号」も含まれる。ワクチン証明書を表示したスマホ画面を提示することで、相手に目視で確認してもらったり2次元コードを読み取ったりしてもらえるようになる。
飲食店の予約サイトなどでの活用も
後者の接種情報取得APIは事業者などに向けて提供するものだ。政府は現在、飲食店やイベントなどで証明書を活用することを検討している。デジタル庁は、例えば飲食店の予約サイトに来店者がワクチン接種記録を入力できるようにするといった用途を想定し、同APIの開発を進めている。
同APIは、「接種券番号」と「生年月日」を送ると、「最終接種回数」と「最終接種日」を返す仕様を想定している。「接種券番号や生年月日をランダムに入力して、不正に接種情報を取得することが懸念される」(デジタル庁の村上敬亮国民向けサービスグループグループ長)ため、返す情報は接種記録を確認するために最低限必要なものに限った。
新システムの開発中にこれら2つの仕様案を公開し、意見募集を始めたのはなぜか。村上グループ長はその理由について、「我々が気付かないような使い方や工夫がきっとある。この段階で公表して意見を募ることにした」と説明する。
意見は2021年9月17日から9月30日まで募集する。証明書の発行主体である自治体のほか、接種証明を活用する事業者、医療機関などから広く募る。