全3878文字
PR

 2021年7月、MS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下の三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険の2社が使用する共通の保険金支払いシステム「BRIDGE」が稼働した。まずは三井住友海上の自動車保険で利用し、順次、火災保険や傷害保険といった他の保険種目やあいおいニッセイ同和損保にも拡大する。システム投資額は800億円だ。

 2010年4月に経営統合したMS&ADグループは、中核損保会社の2社を合併せず、事務や情報システムを統合する「機能別再編」を進めてきた。基幹系システムの機能別再編に関しては、まず2014年に契約管理システムを「ユニティ」として共通化した。今回、契約管理と並ぶ重要システムであり、保険金支払いに関わる顧客と担当者とのやり取りを管理する保険金支払いシステムの共通化が始まることで、基幹系システムの機能別再編はいよいよ総仕上げの段階に入った。

 BRIDGEは2015年から開発を始めた。MS&ADインシュアランスグループホールディングス社長グループCEO(最高経営責任者)の原典之氏は「開発は苦労して難産だった」と振り返る。開発中の2018年に要件定義を大きく見直す必要に迫られ、それによってシステムの完成も当初の見込みより遅れたためだ。

MS&ADインシュアランスグループホールディングス 社長グループCEO(最高経営責任者)の原典之氏
MS&ADインシュアランスグループホールディングス 社長グループCEO(最高経営責任者)の原典之氏
(写真:的野 弘路)
[画像のクリックで拡大表示]

 それでも保険金支払いシステムがBRIDGEによって共通化できれば、主要子会社2社の業務プロセスも共通化できるようになり、大きな生産性向上が見込める。例えば保険金支払い業務に関する両社共通のサービスセンターなどもつくれるようになる。BRIDGE導入による業務削減効果として年間120億円を見込んでいる。MS&ADグループの原社長は「BRIDGEは当社にとって非常に意義のあるシステムだ」と力を込める。

紙の使用量を年間140トン削減

 BRIDGEの導入効果は他にもある。保険金請求手続きが全てオンラインで完結できるようになるため、顧客の利便性が大幅に向上する。また書類のやりとりが電子データでできるようになるため、ペーパーレスが進む。例えば自動車保険において、紙の使用量はA4用紙換算で年間約3500万枚、約140トンを削減できると見込んでおり、脱炭素に貢献できるようになる。

 BRIDGEは、三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保の既存システムを引き継ぐのではなく、米Guidewire Software(ガイドワイアソフトウェア)のパッケージソフトウエアである「Guidewire ClaimCenter」(クレームセンター)を採用して新規に開発した。

 パッケージを使うメリットについて三井住友海上損害サポート本部損害サポート業務部の佐藤賢一部長は、「事故受付から保険金支払いまで一通り機能がそろっていて、世界で導入実績が豊富なクレームセンターを採用することで、自社がこだわりたい機能の開発に注力できた」と語る。例えばカスタマイズ開発した機能としては、保険金支払い漏れをMS&ADグループの基準に従い細かくチェックする機能などがある。

 BRIDGEはパッケージソフトで事故受付や保険金支払いに関するデータ管理を担うクレームセンターを中核に、MS&ADグループが独自に開発したさまざまなサブシステムが連携して構成する。

保険金支払いシステム「BRIDGE」のシステム構成図。注)MS:三井住友海上火災保険、AD:あいおいニッセイ同和損害保険
保険金支払いシステム「BRIDGE」のシステム構成図。注)MS:三井住友海上火災保険、AD:あいおいニッセイ同和損害保険
MS&ADインシュアランスグループホールディングスの資料を基に、日経クロステック作成
[画像のクリックで拡大表示]

 例えば「顧客BRIDGEサブシステム」は、顧客と代理店担当者がスマートフォンを使ってWeb上でやり取りする機能を担う。BRIDGEでは顧客は被害の報告から保険金の受け取りまでをWeb上などで完結できる。ただし紙を使ったやり取りを希望する顧客も少なくない。顧客とは紙でやり取りするが、社内の業務プロセスはペーパーレス化するために、「書類BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」サブシステムを開発した。