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 自動車の自動運転技術は今後、損害保険会社にとって脅威と言える技術になっていくだろう。普及すれば事故が減って自動車保険の売り上げが下がっていくかもしれないからだ。しかし、自動車保険で蓄積してきた事故対応の知見を生かして自動運転技術の進化に貢献しつつ、新しいサービスも提供していこう――。

 こうしたスタンスでDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組み、自動運転技術に関する新しいサービスを開発したのが損害保険ジャパンだ。2021年5月、インシュアテックのソリューション「自動運転向けデジタルリスクアセスメント」の提供を始めた。高精度3次元地図に関する技術を持つアイサンテクノロジーと、オープンソースの自動運転システム「Autoware」の開発を主導して実用化を進めているグループ会社のティアフォーの2社と共同で提供する。

自動運転向けデジタルリスクアセスメントによる評価イメージの一例。自動運転車に搭載したセンサーであるLiDAR(レーザーレーダー)が認識している範囲などを赤色で示して評価できるようにしている
自動運転向けデジタルリスクアセスメントによる評価イメージの一例。自動運転車に搭載したセンサーであるLiDAR(レーザーレーダー)が認識している範囲などを赤色で示して評価できるようにしている
(出所:損害保険ジャパン)
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 このサービスは、自動運転車を使った輸送事業を検討している交通事業者や自治体、工場など広い敷地内への輸送手段の導入を検討している企業などに向けたものだ。

 自動運転車の走行予定ルートを調べた上で、自動運転車に搭載した自動運転システムがセンサーから得られた情報を基に、今どこを走っているのかを認識する「自車位置推定」を高い精度でできるかどうか、危険回避ができるかどうかといった事前調査をこのサービスを通して提供する。サービスでは、損害保険ジャパンが蓄積してきた事故多発地点のデータを活用したリスクの評価なども行う。

 損害保険ジャパンなど3社は2019年2月の業務提携を機に、自動運転車の実証実験に参画しながら、インシュアテックのソリューション開発を進めてきた。実証実験では、自動運転車の走行ルートについて、リスクアセスメントを実施するが、「リスクアセスメントを担当する評価者によって道路の幅や交通量の評価が異なる」「評価者が調査を始めてから、評価リポートを作成し終えるまでに長い期間がかかる」といった課題が見えてきた。

 そこで、「デジタル技術を活用することでリスクアセスメントの定量化や効率化が図れると考えて、自動運転向けデジタルリスクアセスメントを立ち上げた」と損害保険ジャパンの新海正史リテール商品業務部リーダーは説明する。

 損害保険ジャパンの齋藤慶寛リテール商品業務部課長代理によると、これまで走行予定ルートの調査を実施して評価リポートを作成するまでに1カ月強かかっていたという。

 新サービスによって「デジタル化を進めていくことで、リポートを提出するまでの期間を半分程度に減らすことができそうだ。現地の調査も担当者を減らして実施したり、複数のリスクアセスメントを並行実施したりしていける」(齋藤課長代理)という。新海リーダーと齋藤課長代理はティアフォーにも兼務出向している。