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 睡眠計測サービスを提供する筑波大学発スタートアップのS’UIMIN(スイミン、東京・渋谷)が、健康診断施設「医療法人社団大地の会 KRD Nihombashi(日本橋)」との協業を始めた。受診者はKRD Nihombashiで実施される健康診断のオプションとして、S’UIMINの睡眠計測を追加できるようになる。S’UIMINは睡眠時の脳波データを健康診断で得られる詳細なデータと掛け合わせることで、重大な疾患の兆候を早期に発見する仕組みづくりを目指す。

S’UIMINの脳波計測では薄型で軽量の電極を用いる
S’UIMINの脳波計測では薄型で軽量の電極を用いる
(出所:S’UIMIN)
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 眠りについてから目覚めるまでの間に、脳の活動レベルが高く眠りが浅い「レム睡眠」や、その逆となる脳の活動レベルが低く眠りが深い「ノンレム睡眠」を周期的に繰り返していることが知られている。睡眠時のデータを取得することで、こうした睡眠パターンを分析するのが睡眠検査だ。

 現行の睡眠検査の主流は「ポリソムノグラフ(PSG)検査」と呼ばれる手法だ。医療機関に検査入院し、脳波計以外にも様々なセンサーを体に取り付けて、体位や、心電図、鼻からの気流、血中酸素飽和度といった睡眠時のデータを取得する。S’UIMINによると、こうしたセンサーは専門の技師が装着する必要があり、検査中も技師が待機しているため検査は高額になりがちだという。検査を実施できる施設が日本で300程度と限られているといった課題もある。

 これに対してS’UIMINが2020年9月に提供を開始した「InSomnograf(インソムノグラフ)」は、脳波測定に特化した睡眠計測サービスになる。利用者に脳波計を貸与することで、自宅に居ながらにして気軽に検査ができるのが特徴だ。医療機関のベッドと異なり、普段と同じ環境の睡眠データを取得できるのも大きなメリットだという。

5グラムの軽量電極とAI解析が特徴

 InSomnografで用いるデバイスは、使い捨ての電極と睡眠脳波計の大きく2パーツで構成される。電極は額3カ所と両耳の裏2カ所の計5カ所に貼り付ける。全体で5グラムと軽量なのが特徴で、柔らかい素材を使って睡眠を妨げないようにしている。脳波計とはコードでつながっており、使う度に電極部分は取り換える。また、脳波計にはSIMカードが内蔵されており、脳波データはクラウドに直接アップロードされる。

解析結果にはスマートフォンからもアクセスできる
解析結果にはスマートフォンからもアクセスできる
(出所:S’UIMIN)
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 脳波データはクラウドサーバーで稼働するAIが判読する。脳波の判読は通常、1晩分のデータを30秒といった一定の時間ごとに区切り、臨床検査技師が各時間帯の睡眠ステージを判定していくが、こうした作業は時間を要するため大きな負担となっていた。

 筑波大学計算科学研究センターと共同開発したAI(人工知能)は、臨床検査技師が判読した脳波を教師データとした深層学習によって構築されている。InSomnografのAIによる脳波判読の精度は、熟練の臨床検査技師が判読した場合との一致率が80%以上という十分な精度を実現している。数時間かかっていた判読作業が瞬時に自動化されるので技師の負担軽減とコストダウンにつながるという。