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 ペッカー精工(埼玉県東松山市)代表取締役の小泉秀樹氏は、バイオコンポジット製品の成形において、これまで生物由来素材の濃度に大きくこだわってきた。ものづくりに携わる企業として、「消費者を欺くようなものは作りたくない」というプライドがあるからだ。生物由来をうたう世の中の製品で、肝心の生物由来素材の濃度が低くなってしまう原因は、量産化に当たっての製造性や強度、製品品質確保などとのトレードオフにある。それでも小泉氏は、諦めずに1つひとつ課題をつぶして克服してきた。

さまざまなバイオプラを成形

ペッカー精工代表取締役の小泉秀樹氏
ペッカー精工代表取締役の小泉秀樹氏
「インターモールド 2021」(2021年4月14~17日、東京ビッグサイト青海展示棟)会場で。(出所:小林由美)
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 ペッカー精工は、バイオプラスチック製タンブラーのラインアップを数多く備えている。顧客の相談や要望に応えるうちに種類がどんどん増えたという。売れ行きも好調であり「顧客に営業する際にラインアップの多さは有利だ」(小泉氏)。

 さまざまなタンブラーの1つが、リサイクル素材開発ベンチャーであるカミーノ(東京・港)による「PAPLUS」を使った成形品。カミーノは、小松技術士事務所所長の小松道男氏が技術顧問を務めている企業だ。PAPLUSは、牛乳パックや企業排出古紙といったリサイクル紙と、トウモロコシやサトウキビ由来のポリ乳酸(PLA)を複合させた素材。量産に耐え得る素材に仕上げる過程で、小松氏が持つPLA射出成形の特許を生かしているという。

 もう1つは、ヘミセルロースを原料とするバイオプラスチック「HEMIX」にPLAを混合した透明のタンブラー。HEMIXは事業革新パートナーズ(川崎市)が開発した素材だ。透過色のバイオプラスチックは成形品に濁りが生じやすく「透過度の高い製品の成形には高い技術力が要る」と小泉氏は話す。そこでは、これまで石油由来のプラスチックで透過色のパネルなどを製作してきた経験が生きてくる。

RAILROAD TREE TUMBLER「東北MONOバージョン」
RAILROAD TREE TUMBLER「東北MONOバージョン」
「インターモールド 2021」での展示。(出所:小林由美)
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 HEMIX製タンブラーは、東北地域の復興支援と地域活性化を目的にJR東日本グループが立ち上げたブランド「東北MONO」の商品「RAILROAD TREE TUMBLER 『東北MONOバージョン』」として、仙台駅の駅ビルなどで販売されている。事業革新パートナーズが企画と製造に関わっており、鉄道林の間伐材から造られたヘミセルロースを用いた。

 ペッカー精工はこの製品について技術協力している。さらに、HEMIXのヘミセルロースによる耐熱性を生かし、電子レンジで使用できるトレーも製作している。

 透過色の製品としては、三菱ケミカルのバイオポリカーボネート(PC)「DURABIO」を使ったカルトン(キャッシュトレー)も手掛けており、ペッカー精工にとってはそれなりの売り上げ規模になるという。DURABIOは植物由来イソソルバイドを主原料とし、透過色のカラーバリエーションが豊富。透過色にするのは、カルトンを重ねた際に、紙幣が間に挟まっても見えるようにして取り忘れを防ぎたいという顧客要望に基づいている。形状についても、顧客の要望に細やかに応えているという。

植物由来ポリカーボネートのDURABIOで成形したカルトン
植物由来ポリカーボネートのDURABIOで成形したカルトン
「インターモールド 2021」での展示。(出所:小林由美)
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 DURABIOは生分解性を持たないものの、従来のPC並みの耐久性を持つ。ガラスのような耐久性と透過性が必要な部品の代替素材として開発された。それに均等にムラなく着色するようにペッカー精工は努めている。カルトンは店舗接客の場で頻繁に顧客の目に触れるため、銀行のイメージカラーに着色できるのも重要。地方銀行などで採用が進んでいるという。