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 「不正は問題だ。だが、事業存続のためにはそうするしかなかったのだろう。長崎製作所の社員はかわいそうだ」──。鉄道車両用空気調和装置(以下、鉄道車両の空調装置)などを生産する三菱電機長崎製作所(長崎県時津町)で発覚した検査不正。なぜ、長崎製作所の現場は不正に手を染めたのか。その理由について、三菱電機の内情に詳しい関係者の口からは、社員に対する同情とも擁護とも取れる言葉が漏れてくる。

 外からは見えない内情を取材すると、長崎製作所が置かれた厳しい“現実”が浮き彫りになる。

三菱電機の長崎製作所
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三菱電機の長崎製作所
鉄道車両の空調装置で不正検査を行っていた。その理由を探ると、人と設備の不足による、現場の社員にかかる負担の重さという問題が見えてくる。(作成:日経クロステック、長崎製作所の写真:三菱電機)

「金なし、人なし、設備なし」

 三菱電機には製品の開発や生産などを担う製作所が全国に「22箇所」(同社)ある。当然ながら業績には差異があり、稼げる製作所から順位が付く。長崎製作所は「下から数えた方が早い。社内で“もうからない工場”として知られている」(関係者)という。

 多くの日本企業がそうであるように、三菱電機も稼げる製作所には多くの資金を投じる一方、稼げない製作所への資金投入は絞り込む。その経営判断が間違っているとは言い切れない。だが、こと長崎製作所に対しては、同社は必要な費用まで削減してしまったのではないか。

 関係者はこう証言する。「長崎製作所は金がない。だから、人も設備も不足している」と。