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 自由民主党の総裁選が2021年9月29日午後に投開票される。立候補者4人の経済政策はデジタルの利用拡大やデジタル関連産業の育成を次の成長エンジンの1つの柱に据える内容が目立つ。候補者4人のデジタル政策を比較した。

総裁選に出馬した4候補(2021年9月17日の出馬会見)
総裁選に出馬した4候補(2021年9月17日の出馬会見)
(出所:自民党のYouTube公式チャンネルよりキャプチャー)
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 立候補者は岸田文雄元外相、高市早苗前総務相、河野太郎規制改革相、野田聖子幹事長代行の4人。事実上、次期首相を選ぶ選挙であり、勝者1人が掲げるデジタル政策が10月上旬にも発足する次期政権の目玉政策の1つとなる。

 ただし落選した候補者の政策も次期政権で重視される可能性がある。4人の候補はいずれも、総裁選で勝利した場合は他の3候補を要職で起用する意向を示しているからだ。例えば、サイバーセキュリティー庁の創設にまで具体的に言及している候補は高市氏だけだが、岸田氏や河野氏らもサイバーセキュリティー体制を強化する方向性は打ち出している。勝者が誰でも、次期政権は国防や安全保障の観点から国のサイバーセキュリティー政策を大きく見直す契機になるかもしれない。

地方にこそ5G整備、国産の量子コン実現へ背中を押す

 デジタル政策で複数の候補に共通するのが、デジタルを活用した地方の活性化だ。岸田氏は9月17日の演説などで「デジタル田園都市国家構想」を掲げ、地方に対して優先的に5G(第5世代移動通信システム)など高速通信網を整備することで、医療や農林業、教育などに活用する政策を打ち出した。

 河野氏も演説で「全国のどこでもテレワークができる5Gのネットワークを造る」という政策を披露。高市氏は地方の教育機関でデジタル人材を育成するとした。3人の政策は地方の活性化にデジタルを積極活用する点で共通する。

 岸田氏と河野氏の2人は政府が5Gの整備にも積極関与する方向性も示した。焦点はこの政策をどう実現するかだ。2020年春に商用サービスが始まった5Gは、これまでは携帯電話事業者4社がほぼ自己の投資で整備を進めている。総務省も免許付与の条件として、事業者による自己資金での整備を促してきた。

 5Gの整備は各社が前倒しで進めるものの、真の高速な5G網を4G並みのエリアで実現するのはNTTドコモの場合で「2025年前後」との見方もある。国が資金面で後押しすれば前倒しできる可能性は高まる。しかし国の資金投入で民間事業をゆがめる懸念が生じる。

 これまでも政府は、民間資金で整備しにくい過疎地へ光ファイバーや4G基地局の整備を進めるべく、補正予算などを使って補助金を投入してきた実績はある。こうした過疎地向けの支援事業を、整備が遅れがちな地方に対する5Gの整備前倒しにも拡大適用できるか、などが検討されそうだ。

 デジタル分野の研究開発で重点となりそうなのが量子コンピューターだ。高市氏は小型原子炉と並んで「国産の量子コンピューターの開発」に重点的に投資すると、自らの政策所見で表明。岸田氏は自身のブログなどで、2022年度に「10兆円規模の大学ファンド」を創設する構想を表明。投資対象として量子技術のほか、AI(人工知能)や半導体、バイオなどを挙げ、これらの先端技術に研究開発資金を投じるとした。

自民党総裁選候補者が掲げる主なデジタル政策
候補者主なデジタル政策
岸田文雄氏・デジタルインフラ整備を地方で優先させるデジタル田園都市国家構想
・10兆円規模の大学ファンドを2022年度に創設。量子やAI、半導体、バイオなど先端技術に投資
・次期総裁選で党員オンライン投票を実現
高市早苗氏・国産量子コンピューターの開発に重点投資
・地方の教育機関などでデジタル人材育成
・省庁再編で情報通信省、その外庁としてサイバーセキュリティー庁を創設。法改正などでサイバー攻撃を反撃手段や敵基地無力化などに利用可能に
河野太郎氏・全国でテレワークができる5Gのネットワーク整備
・協力金や給付金をプッシュ型ですぐ支給できる行政システム整備
野田聖子氏・女性が抱える健康面などの課題を技術解決する「フェムテック」を推進