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再エネ水素に「レバレッジ」効果

 川崎市にある実験室の装置では、チップに一度水素を封入して加熱すると120日程度、投入したエネルギーを超える熱を出し続けるという。その際のCOP(成績係数:投入・消費エネルギーの何倍の熱エネルギーを得られるかを示す)は12を超えるという。一般的なヒートポンプ給湯機のCOPは3前後なので、桁違いの熱を発生させることができる見込みになっている(図3)。

川崎市にある実験室の装置
川崎市にある実験室の装置
(出所:日経BP)
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 凝縮系核反応による核融合では、熱核融合炉では放出される中性子線やベータ線といった放射線が出ないことも大きな特徴だ。クリーンプラネットの核融合装置でも放射線はまったく観測されていない。

 同社ではまず三浦工業と共同で、工場の乾燥工程などで使う高温蒸気を発生させるボイラーを想定して製品化を進めるという。発熱素子は投入温度が高いほど反応が活発化することから、工場で使いきれない200度前後の排熱を継続的に投入して入口温度とし、出口温度を500度程度に高めるなどの運用を想定している(図4)。

図4●「量子水素エネルギー」による発熱ユニットとボイラーのイメージ
図4●「量子水素エネルギー」による発熱ユニットとボイラーのイメージ
(出所:クリーンプラネット)
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 クリーンプラネットCIO(チーフ・イノベーション・オフィサー)の遠藤美登氏は、「現時点では、発熱量の実測値が想定値より2~3倍も大きくなるケースもあり、やはり定量的な再現性が課題になっている。あと2年ほどかけて改良を重ね、温度制御の精度を十分に高めたうえで製品化したい」と言う。

 さらにその先には、産業向け用途の拡大と民生用、そして発電システムへの応用をイメージしている。

 発熱素子は複数枚、重ねることで1000度近い高温を生み出すことも可能という。「将来的には、製造工程で電化の難しい様々な高温プロセスへの適用も期待できる」(遠藤氏)と見ている。ただ、1200度を超えるとニッケルが融け、素子の層構造が崩れるため、そこで反応は止まるという。見方を変えると、かりに熱交換の不具合などで素子の温度が急上昇しても1200度に達した時点で停止するため熱暴走は起きないという。

 また、民生用の暖房用途などには、断熱構造の工夫で、追加的に熱を加えずに熱自立できるタイプが向いている。「例えば、チップをシート状にし、コンデンサのように巻き紙構造にすることで発熱温度が容易に上がり、熱自立させて長期間、一定の発熱を維持できる可能性がある」と、遠藤氏は言う。

 「発熱素子のナノレベルの積層構造は、日本の製造業が強みとする薄膜技術が生かせる。こうしたノウハウのある企業と組むことでチップの大面積化、シート化も容易とみており、そうなれば応用範囲も広がる」(遠藤氏)と見ている。

 発電システムへの展開では、蒸気タービン発電機との組み合わせをイメージしているという。熱電素子によるコンパクトな構造も可能だが、発電効率を重視すれば、熱を蒸気に転換して発電機を回すランキンサイクルが有利とみている。

 「量子水素エネルギー」は、燃料である水素を再生可能エネルギーで製造すれば、CO2を排出しないカーボンフリーのシステムになる。現在、再エネ由来の水素を電気に変える場合は燃料電池システムを使うが、その場合、発電効率は50%前後と、ロスが大きい。「量子水素エネルギー」であれば、ランキンサイクルによるロスを含めても発熱量が大きい分だけ同じ量の水素から生み出せる電気は、燃料電池の数倍以上に達する可能性があり、その分だけ、再エネにレバレッジ(てこ)効果が働き、結果的に再エネの開発容量を減らせる。

 クリーンプラネットの吉野英樹社長は、「現時点で、量子水素エネルギーの製品化では世界の先頭を走っており、すでに21カ国で特許を取得した。ただ、ここにきて欧米で官民を挙げてこの分野への投資を急拡大させる動きもある。今後もノウハウを持つエネルギー関連企業と連携することで開発速度を上げ、さまざまな用途に展開していきたい」と話す。