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 全日本空輸(ANA)が手掛ける国内線旅客系基幹システム「able-D」の刷新計画の概要が、日経クロステックの独自取材で明らかになった。国内線と国際線のシステムをシームレスに使えるようにする「内際統合」を目指すプロジェクトで、新型コロナウイルス禍に伴い工期を1年延長した。ただしANAは内際統合の完了時期について具体的な言及は避けている。

 ANAは1年の延長期間を生かして内製率を高めるなどの工夫を凝らし、開発コストを当初計画比で10%以上削減する見通し。さらにANAグループ内でシステム開発ノウハウの蓄積も進める考えだ。2010年代前半に検討しつつも見送った内際統合へ、ついに挑むことになる。

「海外発、国内地方行き」を一続きで手配、空港や予約センターも内際統合へ

 ANAで実質的な最高情報責任者(CIO)を務める荒牧秀知執行役員デジタル変革室長が、日経クロステックのインタビューで明らかにした。

日経クロステックのインタビューで旅客系基幹システム「able-D」の刷新計画について明かすANAの荒牧秀知執行役員
日経クロステックのインタビューで旅客系基幹システム「able-D」の刷新計画について明かすANAの荒牧秀知執行役員
(撮影:陶山 勉)
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 荒牧執行役員はable-Dの後継システムについて「国内線と国際線のビジネスモデルを統合する『内際統合』を課題としている」と明かした。具体的には、これまで国内線と国際線で大きく異なっていた運送約款や運賃体系、手荷物の無料預け入れ許容量などのルールをシステム刷新と併せて見直す。これにより、「例えば海外の旅客が国内の地方空港行きの航空券を購入し、国際線と国内線を乗り継いで周遊する旅程を一連で手配可能にする」(荒牧執行役員)など内際のサービスの一体化を図る考えだ。

 旅客系基幹システムの刷新を巡っては、競合の日本航空(JAL)が2017~2019年に先行して内際統合を完了させている。国内線・国際線のいずれのシステムもスペインのAmadeus IT Group(アマデウスITグループ)が提供するクラウドサービス「Altea」に移行した。JALの内際統合では、国内線で刷新前に提供していた旅客サービスに関連するカスタマイズを刷新後にどの程度盛り込むかが焦点となっていた。

 荒牧執行役員はable-Dの後継システムにおけるカスタマイズについて「(今まで通りのきめ細かなサービスを提供したいといった現場の声は)もちろんあるが、靴に足を合わせるという方向で考えている」とする。続けて「内際統合によって、今まで国内線と国際線で分かれていた旅客系システムの教育カリキュラム、空港や予約センターのチーム編成、日常のマネジメントなどを一緒にできる。そうなれば様々な部分で人員効率が上がったり仕事をやりやすくなったりという効果が出てくる」とメリットを強調する。

 ANAではそうした内際統合の長所と短所を踏まえ、新型コロナ禍が拡大する直前の2019年12月に役員会で内際統合を決定したという。「あらゆる部門の総意で『一緒にしよう』となっている。その考え方は新型コロナ禍を経ても微動だにしていない」(荒牧執行役員)。