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 独自CPUコア集積のマイコンが強いルネサス エレクトロニクスは、英Arm(アーム)製CPUコア(Armコア)集積のマイコン(以下、Armマイコン)の市場参入で出遅れた。本格参入したのはわずか2年前の2019年10月。だが、成果が着実に出ているという。新規顧客の獲得に成功したり、買収した海外アナログ半導体メーカー製品とArmマイコンとのセット販売が好調だったりする。Armコア対抗のRISC-Vコアでは、出遅れの轍(てつ)を踏まないように、競合に先駆けて製品を投入していくと宣言した。

 「RISC-V搭載製品を他社に先駆けて投入していく」。この宣言は、ルネサスが21年9月29日にアナリスト/メディア向けに事業の最新状況をオンラインで説明した「Progress Update」でなされた。同社のメインの事業は2つある。1つは「車載向け製品事業」(以下、車載事業)。もう1つは「産業・インフラ・IoT向け製品事業」(以下、産業IoT事業)である。今回、車載事業に関しては、新興の自動車メーカーからのデザインイン(商談獲得)が好調なことなどが説明された*1。また車載半導体不足に関して、社長兼CEO(最高経営責任者)の柴田英利氏が興味深いコメントをした。「顧客に大変な迷惑をかけてしまったが、顧客の現場だけでなく幹部も半導体がどういうものかを理解してくれた。半導体がグラム単価いくらで買えるものではないという認識が広がった」(同氏)。

関連記事 *1 「グラム単価で半導体は買えない」、ルネサスが車載事業説明

 日本では「ルネサスは車載向け半導体のほぼ専業メーカー」と思っている人は少なくないが、同社の車載事業と産業IoT事業の売上高はほぼ半々である*2。例えば、21年第1四半期の売上高を見ると、車載事業の1032億円に対して産業IoT事業は966億円。同年第2四半期では、車載事業が1061億円で、産業IoT事業は1069億円である。一方、世界半導体市場では、車載向け製品の比率は10%以下である。今後、ルネサスが事業規模を拡大していくためには、車載事業のポジションを維持しながら、産業IoT事業を強化することが必須といえる。米Intersil(インターシル)や米IDT(Integrated Device Technology)、英Dialog Semiconductor(ダイアログセミコンダクター)という海外アナログ半導体メーカー3社を買収してきたのも*3、産業IoT事業強化が背景にある。

関連記事 *2 「実需超える発注で半導体材料調達に課題」、ルネサスQ2決算で *3 脱Apple戦略を評価、世界企業を目指すルネサスがDialogを取得へ
車載事業と産業IoT事業の売上高は拮抗
車載事業と産業IoT事業の売上高は拮抗
事業ごとに四半期売上高を示した。(出所:ルネサス エレクトロニクス)
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ロングレンジでは産業IoT事業の伸びが大きい
ロングレンジでは産業IoT事業の伸びが大きい
(出所:ルネサス エレクトロニクス)
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