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 NTT東日本など3社が設立したドローン事業会社であるNTT e-Drone Technologyが本格的に動き始めた。スカパーJSAT傘下のドローン専業メーカーだったエンルートから事業を譲り受け、農薬散布などに向けたドローンの製造販売に乗り出しているほか、農薬散布やインフラ点検など目的別のドローン貸し出し・運航代行サービス「おまかせeドローン」を2021年10月1日に始めた。通信という「サービス」を事業の柱とするNTT東日本が、なぜドローンの「製造販売」企業を傘下に収めたのか。

農薬散布で定評の「即戦力」ドローンを足がかりに

 「ドローンは総合格闘技。自分のものにすれば提案力や課題解決力が高まる。目先の利益貢献というよりは、(NTT東日本グループとしての)引き出しを増やすことで貢献していきたい。5年後や10年後に、当社がこれだけ多くの社会課題を解決できた、NTT東日本の課題解決力を広げてきたと言われるようにしたい」――。

 NTT東日本がドローン子会社を持つ意義について、NTT e-Drone Technologyの山崎顕代表取締役はそう語る。同社はドローン関連ソリューションを手がけるオプティム、ドローン販売のWorldLink&Company(ワールドリンク)とNTT東日本が共同出資で設立。NTT東日本が過半を出資し子会社としている。

NTT e-Drone Technologyの山崎顕代表取締役
NTT e-Drone Technologyの山崎顕代表取締役
(出所:NTT東日本)
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 エンルートからのドローン事業の譲受は「お声がけがあって検討した」(山崎代表取締役)。その際、エンルートが既に市場で一定の評価を得ているドローンを製造販売していた点に着目した。「ここ1~2年でキャッシュを得ようと思ったときに、即戦力の機体を持てる意義は大きいと考えた」(同)。

 エンルートは2020年に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成金の不適切受給が発覚して失速、ドローン事業の譲渡に至った。一方で同社製ドローンの主力機種「AC101」は農薬散布向けで定評があった。「中国DJIの競合製品と同じ面積の農地に半分程度のバッテリー容量で農薬を散布できるなど好評だ」(同)。

 実際、NTT e-Drone Technologyはエンルートから2月1日に事業を譲受してから田植えシーズンの5月ごろにかけて、AC101を約150台販売した。2022年春の田植えシーズンは軽量化などの改良を施したうえで前期比3倍となる450台の販売を目指す。

 エンルートのドローンが強みを持つのが農業領域であることも事業を受け継ぐポイントとなった。「現在のドローン市場では、農業と点検・測量が圧倒的な2大勢力」(同)だからだ。

 通信会社であるNTT東日本だが、実は農業との関わりも深い。同社は東日本エリアにくまなく事業展開していることを生かし、地方の中堅・中小事業者や自治体などの困りごとをICTで解決する地域密着のソリューション展開に力を入れている。なかでも農業は、2019年にスマート農業を手がける子会社のNTTアグリテクノロジーを設立するなど、注力領域の1つだ。