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 トヨタ自動車が実用化した最新の高度運転支援システム「Advanced Drive(アドバンストドライブ)」に、必須とは言えない部品が搭載されている(図1)。それが、バックアップ用のリチウムイオン電池と、それを制御する「冗長電源モジュール」である。これらが、輝きを放つのはこれから。現状の「レベル2」から「レベル3」への橋渡しを担う、重要な部品なのだ。

図1 「Advanced Drive(アドバンストドライブ)」を搭載する「レクサスLS」
図1 「Advanced Drive(アドバンストドライブ)」を搭載する「レクサスLS」
前方LiDAR(レーザーレーダー)や深層学習(ディープラーニング)ベースのAI(人工知能)技術、OTA(Over The Air)によるソフトウエア更新など、新技術を多く盛り込む。(撮影:日経Automotive)
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 トヨタのAdvanced Driveは現状、レベル2に相当する先進運転支援システム(ADAS)である。“手放し運転”は可能だが、あくまで制御の主体は運転者にある。ADASの機能に何らかの失陥が発生しても、運転者が自らの力で車両を停止または安全な位置まで移動させることが前提になる。

 だから、バックアップ用のリチウムイオン電池と冗長電源モジュールを必ずしも搭載する必要はない。それでも採用に踏み切ったのは、レベル2のADASの信頼性向上に加えて、レベル3へのアップデートを見越してのことだろう。

 一方のレベル3は、車両システムが一定時間は車両の制御を続けて、安全に停車する必要がある。このため、センサーやECU(電子制御ユニット)、電動パワーステアリング(EPS)、ブレーキなどに加えて、バックアップ電源が必須となる。実際、レベル3機能を搭載するホンダのセダン「LEGEND Hybrid EX・Honda SENSING Elite」(以下、レジェンド)は、バックアップ電源として鉛蓄電池を備える。メイン電源に万が一の事態が発生したときは、バックアップ電源から各部品に電力を供給する。

自動運転機能の有無を選択できるシステムに

 レベル3は必要か――。自動運転への期待度は人によって様々だ。「運転が好きだから要らない」「ぜひ自動運転車を選びたい」「安ければ搭載してもいい」……。自動車メーカーとしても判断しにくい状況で、顧客に選択肢を用意することが求められる。

 だからといって、レベル2とレベル3でADAS/自動運転のシステムを個別に開発していては効率が悪い。その解決策としてトヨタが考えたのが、レベル2のシステムを「メイン」とし、レベル3を実現するために必要な要素を「サブ」システムとして追加することである。

 その考えを製品に落とし込んだのが、Advanced Driveを搭載する高級車「レクサスLS」と燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」である。そして、サブシステムの中核を担うのが、バックアップ用のリチウムイオン電池と冗長電源モジュールなのだ(図2)。これらの部品を忍ばせておくことで、レベル2とレベル3で別々のシステムを用意しなくてもよくなる。

図2 Advanced Drive向けの冗長電源モジュール
図2 Advanced Drive向けの冗長電源モジュール
デンソーテンが開発した。モジュールの大きさは、ブラケット(取り付け用の金具)部分を除くとA5サイズほど。(撮影:日経Automotive)
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 「既存の車両システムに追加する形で装着する部品なので、小型化が強く求められた。特に、低背化(部品の厚さを薄くすること)に注力した」。こう振り返るのは、Advanced Drive向け冗長電源モジュールを開発したデンソーテンAE事業本部パワーエレクトロニクス技術部長の三木 朗氏である。自動運転機能の有無を選択できるようにするためにも、サブのシステムを最小限にする必要があったようだ。