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 偽の図面まで作る隠蔽工作に、工場長による隠蔽の決断──。三菱電機の品質不正について外部調査委員会がまとめた調査報告書(以下、報告書)。米国の安全規格であるUL規格に関する不正が発覚した名古屋製作所可児工場(岐阜県可児市)への調査は、同工場の悪質な不正行為をつまびらかにしている。

* UL規格 米国の第三者安全科学機関であるUnderwriters Laboratories(UL)が策定する製品の安全規格。

UL規格に関する不正を工場長が隠蔽
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UL規格に関する不正を工場長が隠蔽
名古屋製作所可児工場で発覚したUL規格への不適合問題。不適合品を生産・販売しているという事実を管理職が工場長に報告・相談したものの、工場長が握りつぶした。(作成:日経クロステック)

 UL規格不正があったのは、電磁開閉器「MS-N」シリーズと「MS-T」シリーズ(以下、NシリーズおよびTシリーズ)の部品(可接キャリア)と、「MMP-T」シリーズのマニュアルモータスタータ(配線用遮断器とサーマルリレーを一体化させた製品、以下MMS)。ULに認証登録した材料とは異なる材料を製品の量産に使ったり、未登録の工場で製造したりしていた。

 三菱電機がUL規格への不適合品(以下、不適合品)を販売していた期間は合計で約27年間に及ぶ。不適合品の出荷台数はTシリーズとMMSを合わせて約233万台。これにNシリーズを加えると、不適合品の出荷台数は大幅に増える。Nシリーズについては販売当初から不適合があったとみられ、2016年に生産機種が一部に絞られて以降も21年8月まで「誤記・修正漏れによる」(同社)不適合品を造っていたことが分かっているからだ。ただし、正確な出荷台数については外部調査委員会でも特定できていないという。

技術力不足で4度の開発遅延

 可児工場が不正に手を染めた背景にあるのは、技術力不足だ。UL規格を満たすことができず、開発が遅延した。例えば、Tシリーズは09年2月に開発をスタートし、当初の開発完了(もしくは販売開始、以下同)は11年4月を予定していた。ところが、UL規格に適合する材料を使い、かつ三菱電機が目標とする低コストや小型化、高信頼性(電気的および機械的寿命)を満たせる製品を開発できなかった。

 結局、可児工場は、開発完了の予定を(1)11年10月、(2)12年4月、(3)同年9月、(4)同年11月と4度にわたって遅らせた。MMSも開発が遅延し、開発完了の予定を当初の12年1月(中国市場。日本市場は同年4月)から同年11月に延期している。

 可児工場は12年8月、使いたい材料が認証を得られるか否かについて米国ULに直接確認したが、UL認証には時間がかかり、12年11月の開発完了予定に間に合わないことが判明した。ところが、「FAシステム業務部長より可児(工場)は損益が厳しいので、規格なしでまずは発売したらとのご提案あり」「FAシステム本部長が可児工場に来た際にも、規格なしでも国内発売を早急にしたほうがいい」(共に報告書)という上層部の意見もあり、同年同月から不適合品の量産を開始した。ただし、この時は「(UL)規格不要の顧客向け」(報告書)であり、不適合品を幅広く販売せよという指示ではなかったと外部調査委員会は指摘している。

 ここで問題は、可児工場が「虚偽のUL申請」を行ったことだ。UL規格を満たす材料を使っているとULに申請する一方で、量産する製品には「ダミー材」、すなわちUL認証を得ていない材料を使った。こうして不適合品を急いで発売しながら、その裏でUL規格を満たす材料の開発を続け、開発が完了したらこっそりとその材料でダミー材料と置き換えるつもりだったのである。

 だが、そのもくろみははずれることとなる。

Nシリーズ
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Nシリーズ
電磁開閉器で、Tシリーズの前進機種。UL認証とは異なる材料を使ったり、ULに未登録の工場(委託先)で造っていたりして長年不適合品を生産・販売していた。(出所:三菱電機のパンフレット)