電池技術を手掛ける米Amprius(アンプリウス)の子会社である中国Amprius (Nanjing)(以下、AN社)は、電気自動車(EV)などの電動車両に向けたLiイオン2次電池(LIB)のセルの新製品を発表した。重量エネルギー密度が320Wh/kgと350Wh/kgの電池セルである。前者は量産可能な状況で、後者は2022年初頭に製品化するという。この密度は、EVで先行する米Tesla(テスラ)の主力製品「Model 3」が搭載する電池セルと比べると、約1.3~1.4倍に相当する。あるEVメーカーとアンプリウスが試算した結果、350Wh/kg品をEVに適用した場合に、1000kmの航続距離を狙えるとする。現在、試作した電池パックを顧客向けに披露している。
320Wh/kg品の体積当たりのエネルギー密度は約680Wh/Lである。充放電サイクル寿命はクランピングしない状態で、25℃、100%の放電深度(充電上限電圧4.2V、放電終止電圧2.5V)、充放電レート1Cで1400回充放電した後で、容量維持率は80%だという。45℃では、同じ条件で1069回の充放電後で容量維持率は80%とする。充電レート3Cの場合、17分で満充電に対して80%まで充電できるという。その他の各種性能に関して、EV用途で求められる水準に達したとみている。
350Wh/kg品の体積当たりのエネルギー密度は約800Wh/Lである。充放電サイクル寿命はクランピングしない状態で、25℃、100%の放電深度(充電上限電圧4.2V、放電終止電圧2.5V)、充放電レート1Cで736回充放電した後で、容量維持率は80%だという。充放電サイクル寿命を1000回以上にした試作品を開発・評価中で、これを22年初頭に発売することを目標に掲げている。
AN社は、「HESO」というブランド名の負極向けSi(シリコン)材料を20年から量産している。今回の電池セルには、このSi材料とカーボン材料(グラファイト)を混合した負極材を開発・量産し、搭載した。
高いエネルギー密度だけでなく、コストが安い点も特長にうたう。HESOを利用した電池セルで電池パックを製造した場合、100米ドル/kWhを実現できるとみている。これは、パートナーの自動車メーカーが試算した結果に基づく。大規模量産後、25年ごろに60米ドル/kWhを達成できる可能性があるという。