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 「デジタル金融領域でアバロクを買収できたのは、(NECにとって)とても大きなインパクトだ」。NECの山品正勝執行役員常務はこう力を込める。Avaloq(アバロク)は資産運用管理ソフトウエアを手がけるスイスの会社で、NECが買収した。同社の買収はNECとして最大の買収規模になる。

 NECはデジタル政府/デジタル金融を会社全体の成長事業の大きな柱として掲げている。2021年9月16日、同社は法人向けイベント「NEC IR Day」でもこの戦略について説明している。同社はこれまでに4500億円を投じ、同事業を手がける欧州3社を買収した。公共向けITサービスの英Northgate Public Services(ノースゲート・パブリック・サービス、NPS)、デンマークの大手IT企業KMD、そしてアバロクだ。

 デジタル金融分野についてはアバロクが重要な役割を担う。NECはアバロクを2360億円で買収すると2020年10月に発表し、同年12月に買収を完了してアバロクは正式にNECグループとなった。その後、経営統合や業務統合を含むPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)100日プランを2021年4月に完了した。

資産運用管理ソフトで欧州トップシェア

 アバロクが主に手がけるのは、富裕層を対象とした資産運用管理(ウェルスマネジメント)向けのソフトウエアである。1985年の設立以来、欧州大手銀行の勘定系システムや金融資産管理向けソフトを提供してきた。アバロクは現在、金融資産管理ソフト市場で欧州トップシェアだ。テクノロジーに詳しいThomas Beck氏と営業・製品に詳しいMartin Greweldinger氏の2人のCo-CEO(最高経営責任者)体制を取る。

アバロクのThomas Beck氏(左)とMartin Greweldinger氏
アバロクのThomas Beck氏(左)とMartin Greweldinger氏
出所:NEC
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 アバロクは具体的には、資産運用委託の管理やリスク測定といったポートフォリオ管理、AI(人工知能)を活用した投資アドバイザリーといったサービスを提供する。顧客が持つ現金預金や株式、証券、不動産といった資産を、市場動向に応じて最適にできるように支援する。

 日本においてはウェルスマネジメントサービスはまだ黎明期の状態にあるため、資産1億円以上の富裕層に加えて、5000万円以上の準富裕層も含めてサービス展開をする。

 「これまでの買収企業と比べると、アバロクは非常に早く成果が出始めている」。山品常務はこう話す。アバロクは2020年度から2025年度にかけてCAGR(年平均成長率)11%で伸びると見込む。NPSとKMD、アバロク3社の売上高合計は2020年度で1251億円だった。2025年度はその約1.7倍の2100億円とする。

「現金預金から資産運用へ」の潮流をいち早くつかむ

 NECがアバロクを2360億円もかけて買収した狙いはどこにあるのか。狙いは大きく2つある。

 1つめは金融業界を取り巻く大きな潮流にいち早く対応することだ。金融業界はITベンダーにとって大きな顧客である。低金利政策の長期化により、銀行をはじめとした金融機関は従来の現金を貸す・預かるといった事業だけでは収益を上げることが難しくなっている。