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 東京建物は、本社オフィスの空調制御に人工知能(AI)を取り入れた。最大の特徴はAIによる制御を「二重化」した点。温度ムラを解消し、空調コストの低減につなげた。

 同社が空調制御AIを導入したのは、東京建物八重洲ビル7階。フロア内65カ所に設置したセンサーで室温を測定している。2020年の稼働当初は1台のAIだけで運用していたが、どうしても解消できない温度ムラが発生したことから2台のAIを並行して動かすように改修した。

中央右にあるのが65カ所に設置したセンサーのうちの1つ。温度、湿度、二酸化炭素濃度を計測できる
中央右にあるのが65カ所に設置したセンサーのうちの1つ。温度、湿度、二酸化炭素濃度を計測できる
(出所:内田洋行)
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暖房時期に「温度ムラ」問題が浮上

 東京建物は空調に関して悩みを抱えていた。同社はオフィスビル管理業務の一環として、テナントに対し顧客満足度を調査している。その中で長年「空調の快適性」についてスコアが低迷していた。調査では「清掃員の雰囲気」や「照明の快適性」など多数の項目を問うが、同社のビルマネジメント第一部ビル営業グループテクノロジー実装推進担当の小澤大輔氏は「空調の快適性についての満足度は、長年ワーストランキングの常連だった」と振り返る。

 その悩みに対し内田洋行とTOKAIコミュニケーションズが自分たちの技術で解決できないかと働きかけた。内田洋行は空調や照明などオフィス内の機器を制御するための装置(コントローラ)を販売している。一方、TOKAIコミュニケーションズはデータセンター事業者向けに空調制御AIを提供しており、空調制御のノウハウがあった。これらを組み合わせることで、人手に頼らず快適な室温に調整する仕組みが作れないだろうかと提案したのだ。3社はAIを使った空調制御について共同で実証実験(PoC)することを決めた。東京建物はPoCの場として東京建物八重洲ビル7階を、内田洋行はコントローラを提供し、TOKAIコミュニケーションズはAIの開発を担った。

AI空調制御システムの全体像。センサーで取得した情報をコントローラに集め、クラウド上のAIサーバーに送信、AIが適切な空調設定を計算する
AI空調制御システムの全体像。センサーで取得した情報をコントローラに集め、クラウド上のAIサーバーに送信、AIが適切な空調設定を計算する
(出所:内田洋行)
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 2020年7月に稼働させた「AI空調制御」は2020年の秋まで順調に稼働し、フロア全体を人間にとって快適な室温に保っていた。だが2021年の1月に新たな課題が浮上する。フロアの一定エリアだけ周囲より暑くなる「温度ムラ」が発生したのだ。

 温度ムラが発生したのは東京建物が「アトリエ」と呼ぶ、打ち合わせなどに使うスペースだ。アトリエは長方形のフロアの角に設置されており、棚が壁のように取り囲むことで周囲と区切られている。棚は前後に貫通するタイプで空気が抜ける。そのためPoCの開始当初は他のエリアと同じような室温に保たれる想定をしており、実際秋までは温度ムラがなかった。だが気温が下がり空調を暖房運転する時期になってアトリエ内が他のエリアより暑くなりはじめ、AIによる調整がうまく働かなくなった。

PoCの場である東京建物八重洲ビル7Fのフロア図とセンサーの配置位置。赤枠で囲ったエリアが「アトリエ」
PoCの場である東京建物八重洲ビル7Fのフロア図とセンサーの配置位置。赤枠で囲ったエリアが「アトリエ」
(出所:内田洋行提供資料に日経クロステックが追記)
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