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 世界シェアが2%で「スモールプレーヤー」と自称するマツダが、生き残りを懸けて国内の車両組み立て工場の改革を急いでいる。幅広い車種の生産に対応しつつ、設備投資の費用を抑え、なおかつスピーディーに生産ラインを立ち上げられるようにする。保有する生産ラインの資産を最大限に生かしながら、幅広い車種を造る「多車種混流生産」を実現する。

工場改革を進めた防府第2工場
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工場改革を進めた防府第2工場
投資費用を抑えながら、これまで以上の多車種混流生産を実現した。(写真:マツダ)

 同社は、クルマに対する市場からの要求はどんどん増え、商品仕様や車種構造の変化は今後も加速すると見込む。こうした中、パワートレーンの種類はエンジン車から電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEV)、プラグインHEV(PHEV)まである上に、乗用車やSUV(多目的スポーツ車)といったクルマのタイプや車体の大きさも多様化している。こうした幅広い選択肢の中から、どの商品がどれくらいの割合で売れるかは見通しづらい。そこで、これらの選択肢をカバーするために、マツダは多車種混流生産をキーワードに工場改革を進めている。

 ただ、混流生産を目指す点は、他の日本の自動車メーカーと変わらない。マツダの光る特徴は、他社と比べた企業規模の小ささを踏まえて、投資効率を目いっぱい高めていること。平たく言えば、「できる限り金をかけない」という考えである。

変更箇所を最小限に抑える

 そのための基本コンセプトは、新しい車種を造ることになった場合でも、生産ラインの変更点をできる限り抑えることだ。このコンセプトを具現化するために、マツダは「一括企画」を実施する。これは、開発部門と生産部門が一体となり、5~10年先を予想しながらクルマや技術を企画するものだ。

マツダが実践する製品企画「一括企画」
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マツダが実践する製品企画「一括企画」
開発部門と生産部門が共同で新車種を企画する。ここで、車種によって変わらないものづくりの共通部分「固定要素」を抽出し、あらゆる車種の生産に使える汎用設備の開発に生かす。(出所:マツダ)

 同社は、今後造るクルマがどのように進化あるいは変化しても、普遍的で変わらない部分を「固定要素」、変わり得る部分を「変動要素」と大きく2つに分ける。その上で前者の固定要素に着目し、車種によらず共通するクルマや部品の固定ポイントなどを見いだす。加えて、部品の組み立て順序や基準も共通化することで、汎用性を備えた設備(以下、汎用設備)を開発する。こうして、あらゆる車種に対応できる汎用設備を、次世代車を含む新しい車種にも使い回す。

 一方で、変動要素については「フレキシブルモジュールライン」で対応する。車種によって異なる部品形状に対応した専用治具「治具モジュール」など、モジュール化させた設備(以下、設備モジュール)を用意。これにより、汎用設備では対応できない、新しい車種における新規設計の部分や従来車種とは構造が異なる部分の組み立てを実施する。

 マツダは従来、新車種を導入するたびに「車体サブラインを“焼き畑農業”的に造り直していた」(同社)。既存の車体サブラインを取り壊し、“更地”にした床面に新しい車種の生産に対応した専用の車体サブラインを新設していたのだ。これでは投資費用がかさみ、工事期間も長くなる。

 そこでこの方法を改め、同社はフレキシブルモジュールラインを導入し、さまざまなボディータイプやデザインのクルマを同一の生産ラインで造れるようにした。すなわち、エンジン車でもEVをはじめとする電動車でも、車体の大きさの異なる小型プラットフォーム(スモールプラットフォーム)搭載車でも大型プラットフォーム(ラージプラットフォーム)搭載車でも、エンジンの縦置き車種でも横置き車種でも、全て同じ生産ラインで組み立てることができる。

 こうして、マツダは汎用設備をメインに使い、車種によって対応できない部分のみを設備モジュールで補う考え方で生産ラインを構築することで、投資費用を抑えるのである。

 幅広い車種に対応する汎用設備の開発や工程レイアウトの考案のために、同社はデジタル変革(DX)も導入している。