マツダは2021年9月、店舗で既販車のディーゼルエンジンの制御プログラムを更新し、性能を最新仕様に向上させる有料サービスを開始した。同社の取り組みは、現在のクルマ開発や販売の在り方を変える可能性が大きい。全面改良や部分改良の時期に縛られることなく、車両の開発を進めやすくなるからだ。販売面では既販車ユーザーの満足度を高められることに加えて、新車販売にも寄与する。今後は、OTA(Over The Air)によるソフトウエア更新でクルマの性能を向上させる動きが広がると予想される。本格的なOTA時代に向けて、自動車メーカーには販売店の役割の再定義も求められる。
ソフトウエアの更新によって、クルマの基本性能を向上させる取り組みが活発になってきた。先陣を切ったのはマツダである。
同社が21年9月に開始した有料サービス「MAZDA SPIRIT UPGRADE D1.1」は、ディーゼルエンジン「SKYACTIV-D 1.8」を搭載する小型車「マツダ3」と小型SUV(多目的スポーツ車)「CX-30」の初期型モデルを対象にしたもので注1)、日本仕様車限定のサービスとなる(図1)。
燃費性能を維持して出力を高める
マツダの有料サービスでは、初期型モデルの燃費性能を落とさずに、最高出力を116PS(約85kW)から130PS(約95kW)に高める。この値は、20年11~12月に発売したマツダ3とCX-30の部分改良車と同じである注2)。
ソフト更新の結果、発進加速の時の応答性や力強さが向上し、アクセルを踏み込んだときの加速が滑らかになる。さらに、3000rpm以上のエンジン回転数におけるトルクの落ち込みを抑えることで、高速道路における合流・追い越しなどで力強い加速を実現できるという(図2)。
マツダは21年2月から、ソフト更新によってガソリンエンジンの性能を高めるサービス「MAZDA SPIRIT UPGRADE」も提供している。「e-SKYACTIV X」を搭載するマツダ3とCX-30の初期型モデルを対象にしたもので注3)、サービスキャンペーンの一環として無料で実施している。具体的にはソフト更新によって、同エンジンの最高出力と最大トルクを最新仕様に向上させる。