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 日本企業の76%がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する人材が足りないと感じているにもかかわらず、6割超は社内にどんなITスキルを持つ人材がいるのかさえ把握していない。情報処理推進機構(IPA)が日米のDXの取り組み状況を調査したリポート「DX白書2021」から、こんな実態が判明した。自社の現状の把握といったDXを進める基本の「き」といえる活動を忘れていないか、日本企業は点検を求められている。

 「DXに取り組む日本企業は増えつつあるが、米国企業と比べると中身に大きな差がある」――。2021年10月11日に公表したDX白書のとりまとめ役を務めたIPA社会基盤センターの古明地正俊イノベーション推進部部長はこう指摘する。中でも人的リソースの確保については、日米の企業に隔たりがあったと明かす。

 例えばDXを推進する「変革を担う人材」の数について日本企業は、「大幅に不足している」が30.8%、「やや不足している」が45.2%と、4分の3以上が不足していると回答した。これに対し、米国企業はそれぞれ20.3%と22.8%だった。米国企業と比べて、日本企業は人材を思うように集められていないと自らを見ている。

事業戦略上、変革を担う人材の「量」の確保。日本企業の76%は変革を担う人材の量が不足している
事業戦略上、変革を担う人材の「量」の確保。日本企業の76%は変革を担う人材の量が不足している
(出所:情報処理推進機構の資料を基に日経クロステック作成、以下同)
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 不足を感じているにもかかわらず、人材育成の取り組みでも米国に後れをとる。人工知能(AI)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)などのデジタル技術について、明確な方針を持って社員を教育している日本企業は24%と4分の1に満たず、全く教育していない企業が66.6%にのぼった。米国企業は7割超が明確な方針の下で技術教育の機会を設けていた。

現状を把握していない日本企業

 なぜ多くの日本企業はデジタル技術の教育に取り組めていないのか。日本企業の多くがシステム開発の大部分を外注してきた長年の慣習も原因の1つと考えられる。ただ、IPAの古明地部長は基本的な取り組みの必要性を指摘する。「まず現状を把握し、戦略的に何をやるかを明確にすべきだ」(同)。

 現状を把握し、あるべき姿を描く作業は、システム開発プロジェクトや現場の業務の改善活動であれば基本中の基本といえる。ところがDXの取り組みではAIやIoTなどを使った先進的な事例に目を奪われやすいためか、基本を忘れ去ったり軽視したりしている傾向が見られるという。DX白書の調査では、日本企業の6割超が「社内のITリテラシーのレベルを把握していない」と回答した。

ITリテラシーレベルの認識・把握。日本企業の6割超が自社のITリテラシーを把握していない
ITリテラシーレベルの認識・把握。日本企業の6割超が自社のITリテラシーを把握していない
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