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 応用物理学会は2021年9月23日、VR(Virtual Reality)空間の中での学会発表(VR発表)を実施した。同学会は、同年9月の第82回応用物理学会秋季学術講演会をすべてオンライン(Zoom)で開催したが、特にフォノンエンジニアリングやエネルギーハーベスティング(EH)をテーマとする23件のポスター発表でVRを利用した。「VR自体を研究テーマとする日本バーチャルリアリティ学会での取り組みを別にすると、一般の学会かつ一般の学術テーマで最大1000人まで参加可能な規模でVR発表を実施したのはこれが初めて」(VR発表を主導した産業技術総合研究所 エレクトロニクス・製造領域 総括研究主幹の秋永広幸氏)という。

東京理科大学(TUS)理学部応用物理学科 中嶋研究室の「走査型熱電応答顕微法を用いたカーボンナノチューブの局所的熱電特性評価」の発表の様子(講演番号B1-P4:23p-P11-1)
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東京理科大学(TUS)理学部応用物理学科 中嶋研究室の「走査型熱電応答顕微法を用いたカーボンナノチューブの局所的熱電特性評価」の発表の様子(講演番号B1-P4:23p-P11-1)
(写真:応用物理学会)
大阪大学 基礎工学部 中村研究室の「熱電材料における局所電位変化の直接測定」の発表の様子(講演番号A1-P4:12a-N106-9)
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大阪大学 基礎工学部 中村研究室の「熱電材料における局所電位変化の直接測定」の発表の様子(講演番号A1-P4:12a-N106-9)
(写真:応用物理学会)

 VR発表といっても、講演者、参加者共に、高価なVRゴーグルなどは必須ではなく、ノートパソコンなど一般のオンライン会議に必要な機器があれば利用できる。従来のオンライン会議との違いは、参加者の横のつながりが生まれる可能性がある点だ。応用物理学会 会長で東京工業大学 教授の波多野睦子氏は、「これまでのオンライン会議では、参加者同士の偶然の交流が生まれず、講演者とのやり取りも(五感を使わない)言葉だけのコミュニケーションに限定されてしまっていた。VR発表にすることで、異分野の研究者間の非言語的なコミュニケーションやランダムな交流が生まれることを期待した」という。EH関連で最初に実施したのも、このテーマが多くの研究者にとって共通の研究テーマになりやすいからだという。この分野横断的な交流を図るために、ポスター発表のほかに、談話室の機能も設けたとする。応用物理学会は今後もこのVR発表を、口頭発表、ポスター発表に次ぐ第3の講演形態として積極的に増やしていく方針だ。