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 新型コロナの感染症拡大の予防と経済活動を両立させる切り札として、民間企業や地方自治体が独自にデジタル式のワクチン接種証明を開発・導入する動きが相次いでいる。接種券を用いた簡易な紙の「接種済み証」などと本人確認書類を同時に提示する手間をなくし、両方の役割をスマートフォンのアプリで一度に代用できるようにする。

凸版印刷が開発したデジタル式のワクチン接種証明「PASS-CODE」の画面例
凸版印刷が開発したデジタル式のワクチン接種証明「PASS-CODE」の画面例
(出所:凸版印刷)
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 複数のアプリが乱立すれば利用者に不便を強いる恐れがあるものの、先行する方式には国の仕様案にはない先進的な機能や独自のメリットを訴求している例もある。2021年末の導入に向けて接種証明スマホアプリを開発している政府が、民間アプリの利点に学ぶべき点は多そうだ。

旅行・飲食チェーンが参加、8万社加盟の東商も協力

 民間で先陣を切る見通しなのは、感染症検査キットを扱う新興企業のICheckと検査普及の団体であるメディカルチェック推進機構が共同で運営する「ワクパス」。2021年10月6日にサービス提供を発表しており、iOSとAndroid向けのアプリを既に申請済みだ。審査が通過すればすぐに運用を開始するという。

 凸版印刷も独自の方式とアプリ「PASS-CODE」を開発し、2021年8月から社内で実証実験を進めている。2021年末ごろの実用化を予定し、自らアプリを提供して店舗などで利用する企業を募るほか、独自の接種証明を導入したい自治体などにもシステムを外販する考えだ。

 自治体では沖縄県石垣市が2021年9月末に提供を開始したほか、群馬県も2021年10月13日から提供する。どちらも専用アプリではなく対話アプリ「LINE」を活用した。

 民間や自治体が提供するアプリは公的な証明を目的とせず、利用場面は商業施設での特典付与などに限られる。それでも経済活動を回復させたいサービス業を中心に多くの採用希望が来ているという。

 ワクパスはすでに旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)や「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトなど約10社が採用を決めたほか、約8万社が加盟する東京商工会議所が普及に協力する。凸版は民間と自治体を合わせて約50の法人・団体から問い合わせがあり、要望の聞き取りや商談を進めているという。

検査の陰性証明も搭載、ワクチン・検査パッケージに対応へ

 民間のアプリに特徴的なのは陰性証明の機能も取り込んだ点だ。凸版印刷のPASS-CODEは既に、PCR検査や抗原検査、抗体検査の検査結果を有効期限とともにアプリで管理でき、ICheckなどによるワクパスは次期アプリで実装する。ワクチンを接種できない人なども、1つのアプリで行動制限緩和に対応できる仕組みを用意した。

 行動制限緩和やその条件として政府が推進するワクチン・検査パッケージは、2021年10月時点では実証実験の段階だ。詳しい運用指針はこれからだが、ICheckと凸版印刷ともに政府の指針にはできる限り準拠したい方向だという。