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 村田製作所は2021年10月12日、生産子会社の金津村田製作所(福井県あわら市)で使う電力を同年11月1日から全て再生可能エネルギーにすると発表した。太陽光発電で得た電力を、生産計画や天候に合わせて、効率よく充放電するシステムを導入した。購入電力は再エネ由来のものに切り替える。村田製作所の中島規巨社長は「エレクトロニクス産業で生き残るために必要な取り組みだ」と強調した。

金津村田製作所に設置したカーポート型の太陽光パネル
金津村田製作所に設置したカーポート型の太陽光パネル
豪雪地帯のため175cmの積雪に耐える設計になっている。約300台駐車できる駐車場の内、167台分のスペースを使って設置した。(写真:日経クロステック)
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 同社グループで使用電力を100%再エネでまかなう工場は初めて。工場内の建物の屋根と駐車場に太陽光発電システムを設け、8月に本格稼働させた*1。併せて自社開発した電池容量913kWhという「北陸最大規模」(同社)の蓄電池システムを導入し、太陽光発電の余剰電力をためられるようにした。

*1 工場の屋根に設置した太陽光パネルの発電容量(出力)が255kW、駐車場に設置した太陽光パネルの発電容量が383kW。合計638kWの発電容量を持つ。

 この自家発電設備で工場の消費電力の13%をまかなう。今後、さらに約700kWの発電容量の太陽光パネルと、それに合わせた電池容量の蓄電池システムを増設し、自家発電比率を27%まで引き上げる計画だ。11月1日からは電力契約を再エネプランに切り替え、自家発電で補えない電力も再エネにする。

 今回開発の肝となったのは、発電した電力の制御だ。従来の太陽光発電は固定価格買い取り制度(FIT)を活用し、余剰電力を系統に逆潮流させることが多く、細かな制御は不要だった。これに対し、電気を自家消費する場合は、余剰電力を効率よくため、使い切るための制御を要する。

 具体的には、気候や温度に基づく「翌日の発電量の予測データ」と、工場の稼働率などに基づく「翌日の消費電力量の予測データ」を組み合わせ、人工知能(AI)で機械学習を行うことで制御した。例えば、翌日の発電量が多く、消費電力量が少ない予測なら、あらかじめ蓄電池を空にして余剰電力の充電に備えるように制御する。

金津村田製作所に設置した蓄電池システム
金津村田製作所に設置した蓄電池システム
東北村田製作所の郡山事業所(福島県郡山市)で製造した電池セルを金津村田製作所でモジュール化している。オリビン型リン酸鉄リチウムイオン2次電池を使用しており、安全性と長寿命を売りにする。耐用年数は15年を目標とする。同システムは17年にソニーから買収した電池事業に由来する。(出所:日経クロステック)
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 反対に発電量が少なく、消費電力量が多いと予測した場合は蓄電池を事前に充電し、放電に備える。「制御の精度によって効率が数%単位で変わる」(村田製作所新規事業推進部シニアマネージャーの堤正臣氏)という。今後、蓄電池システムを利用しながらデータを収集することで、さらに精度が向上する見込みだ。