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 大日本印刷(DNP)が漫画の翻訳支援サービスを強化する。漫画の翻訳作業用クラウドサービスにAI(人工知能)による翻訳機能を新たに組み込み、2022年3月までの実用化を目指す。これにより翻訳作業の所要時間を約30%短縮し、国産漫画の海外発信に弾みをつけたい考えだ。

 DNPは、日本語のせりふが書かれた漫画を英語などに翻訳するための翻訳作業用クラウドサービス「MOES(モエス)」を開発・提供している。これまでは翻訳者が同システムを使い、日本語のせりふを見ながら英語などの訳語を吹き出しに手作業で入力していた。同サービスの追加機能として、漫画に特化した翻訳エンジン開発のスタートアップ企業であるMantraのAI翻訳エンジンを組み込む。

大日本印刷の「MOES」の概要
大日本印刷の「MOES」の概要
(出所:大日本印刷)
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AIを3段活用、学習データの工夫で翻訳精度高く

 AI翻訳エンジンの処理プロセスは、(1)個々のコマと吹き出し領域の検出(2)文字の認識と吹き出しの順序の推定(3)認識した文字の機械翻訳、という流れになっている。(1)の領域検出は、東京大学が公開している国内の漫画作品とアノテーションデータのセットである「Manga109-s」などを教師データとして使用。(2)の文字認識では精度を高めるため、フリガナを学習データから除外する、絵の上に文字が重なった疑似データを人工的に生成する、などの工夫を施した。

 MantraがMOESへの機能実装に際し、特に注力したのは(3)の機械翻訳の精度だ。これまでのMantraのAI翻訳エンジンでは、漫画のジャンルごとに精度が大きく異なっていた。この点に着目し、「学習データをジャンルごとに分類し、ジャンルごとに異なる学習データで翻訳エンジンを学習させた」(Mantraの石渡祥之佑代表取締役)。

 石渡代表取締役によると、実際にMantraのAI翻訳エンジンを組み込んだMOESを試用した翻訳者からは「翻訳は完璧ではないものの、他の自動翻訳よりも自然なせりふに翻訳されている」「(一緒に評価した他の自動翻訳より)わずかな修正で済むケースが多かった」といった声が届いているという。まずは日本語から英語に対応しているが、今後は中国語や韓国語への翻訳や、そうした外国語から日本語への翻訳にも対応していきたいとする。