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 「昇格に転勤はつきもので、断れば出世に響く」「夜遅くまで働かないと『サボっている』と思われる」――。日本企業が社員に強いてきた猛烈な「働かせ」方に、ノーを突きつける企業が現れた。通信最大手のNTTだ。

 同社が2021年9月に発表した経営スタイルの変革案。日本型雇用を象徴する制度である転勤や単身赴任を不要にと大胆に明言した点が世間の耳目を集めているが、それだけではない。新型コロナウイルスの感染収束後もリモートワークを基本とし、組織や人材の地域分散を進め、社員を職務内容に応じて処遇する「ジョブ型」も拡大する、包括的な構想だ。

 「昭和のカルチャーを脱し、あくまでも仕事の成果を上げるために社員がしっかりと働ける環境を会社が用意するということ。社員もそれに応じ、自らのライフスタイルに合わせた環境を選択していけるようになる。それが今回の施策で最終的に目指す姿だ」。NTTの渋谷直樹副社長は日経クロステックの取材に、こう説明する。

「社員が『仕事の成果を上げる』ためにしっかりと働ける環境を用意する」と話すNTTの渋谷直樹副社長
「社員が『仕事の成果を上げる』ためにしっかりと働ける環境を用意する」と話すNTTの渋谷直樹副社長
(出所:NTT)
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構想を画餅で終わらせない

 構想を画餅で終わらせず本気で実現するため、NTTは最新のデジタル技術をフル活用することにした。一例がリモートワークを支える新たな情報システム環境の整備だ。

 具体的には、ネットワークが全て危険だと認識して「何も信頼しない」という意味の「ゼロトラストネットワーク」と呼ぶ考え方を採用した。社内ネットワークの守りを固めるのではなく、業務アプリやデータをサイバー攻撃からどう守るかを重視したIT環境を全社的に整備していく。

 内容はこうだ。NTTグループではもともとVPN(仮想私設網)と仮想デスクトップ環境(VDI)、シンクライアント端末を併用するリモートワーク環境を運営していた。VDIを使わなければ業務アプリやSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を利用できなかった。それをVDIやシンクライアント端末を使わない環境に切り替える。具体的にはメールやグループウエア、ファイル共有などをクラウドサービスに集約し、どこにいても利用できるようにする。

 同時にローカルにファイルを保存して作業できる「セキュアFAT」と呼ぶ端末を導入。VPNとシンクライアント端末を使ってセキュリティーを担保する手法から、認証強化と端末におけるデータ暗号化などによってセキュリティーを担保するゼロトラスト型の手法に切り替えるわけだ。既にNTTコミュニケーションズなどがセキュアFATを順次導入しており、グループ全体に広げる。主要会社のスタッフや営業系の社員向けには2022年度までに展開を完了させるという。