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 愛知県豊明市で2021年10月、同市と中部電力、藤田医科大学病院などを有する藤田学園が組み、スマートメーターを活用した高齢者世帯の見守りに関する実証実験を始めた。スマートメーターから得られる電力データをAI(人工知能)技術で解析することで世帯主の生活パターンを推定し、健康な状態と要介護状態の中間である「フレイル」と呼ばれる体の衰えの状態を検知する。

 実証実験の期間は2023年3月まで。フレイルになりやすく、周囲もそれに気づきにくいとされる単身高齢者が主な対象だ。2021年度中は30世帯程度を目標とし、最終的には約100世帯にまで広げる予定だ。

 フレイルは兆候を早期につかみ、生活習慣を見直すなど適切な対処を取れば、進行の抑制や健康状態への回復が見込めるといわれている。中部電力らは、AIでフレイルの可能性が高い高齢者を見つけ出したうえで、本人に対して予防・改善に向けたアドバイスを行うとともに、地域の介護福祉関係者が適切な予防・改善プログラムを提供できる仕組みの構築に向けて検証を進める。

2023年3月までには全契約者向けにスマートメーターの設置が完了する予定だ
2023年3月までには全契約者向けにスマートメーターの設置が完了する予定だ
(出所:中部電力)
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 少子高齢化が急激に進む日本において、医療・介護体制の逼迫や社会保障給付金の増大は喫緊の課題だ。「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となる2025年には、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上になる。

 こうした社会においては、要介護者の増加をできるだけ抑え、一人ひとりの健康寿命を延ばすことが重要だ。今回の実証実験で、フレイルの早期発見および対処の有効性が証明されれば、社会に果たす役割は大きい。中部電力の山本卓明事業創造本部デジタルイノベーションユニットスタッフ課長は、「(中部電力は)電力供給をするだけでなく社会課題にも向き合っていく」と力を込める。

約8割の精度でフレイルを判定

 実証実験に先立ち、中部電力とインターネットイニシアティブ(IIJ)の合同会社であるネコリコ、東大発スタートアップのJDSC(旧:日本データサイエンス研究所)らは三重県東員町で2020年秋に先行研究を行った。両社は豊明市での実証実験にも引き続き参画している。

 先行研究には健康とフレイルそれぞれの状態にある単身高齢者が計24人参加した。高齢者の自宅にモーションセンサーやCO2センサーなどを設置。スマートメーターから得られる電力データとともに2020年8月から2~3カ月(最長6カ月)間データを取得した。

 「電力データからは外出時間や頻度、睡眠時間などを推定できる」(山本スタッフ課長)。こうして得られたデータをAIに学ばせることで、フレイルを正しく判定できるのかを検証した。この結果、電力データ(30分値)のみを使用した場合でも、センサーを併用した海外の先行研究に迫る78%の精度でフレイルか否かの判定が可能だと分かった。

海外で実施された先行研究との比較を表すグラフ
海外で実施された先行研究との比較を表すグラフ
(出所:介護予防に向けたAI・データ活用研究会)
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