全1936文字
PR

 衛生用品大手のユニ・チャームは、高精細映像の送受信機能やネットワーク基盤を備える新業務システムを開発した。2021年10月13日に発表した「デジタルスクラムシステム」だ。日本と海外の拠点を結んで高精細な映像を送受信し、世界各地の顧客の生活実態調査や製品改良のための情報収集、設備のメンテナンス指示などを可能とする。

 ユニ・チャームはなぜこのようなシステムを開発したのか。同社は「現場・現物・現時点」の「3現主義」を掲げる。現地で得た1次情報を基にそれぞれの国や地域に密着したマーケティングを行って商品を開発し、地産地消の生産体制を構築してきた。同社のDX(デジタルトランスフォーメーション)は業務の効率化だけでなく、新商品の開発につながる顧客のインサイトを発見するためのデジタル技術の活用に主軸を置く。

 ユニ・チャームの共生社会研究所兼IUC推進室に所属する菅文美氏は「デジタル技術を活用して何ができるか考えたとき、キーとなる2つの課題が出てきた。商品の開発や改善のためのクリエーティブな業務に費やす時間を十分に確保できていない点と、各部門にいる専門家同士の情報共有が十分にできていない点だ」と打ち明ける。同社の海外ビジネスは年々拡大し、既に海外の売上高が6割以上を占める。

 コロナ禍前は、海外現地での情報収集や生産支援のため商品開発担当者の海外出張も多くなり、クリエーティブな業務にかける時間を十分に確保できなくなっていた。また、実際に現地を見てきた担当者とそれ以外の担当者に情報の格差が生じていた。

 こうした問題に対処するため商品開発プロセスを変革する方針を定め、解決手段としてデジタルスクラムシステムを開発した。現地から届くリアルタイムの映像を日本の拠点で確認することにより、情報収集の効率化と情報共有を実現する。

デジタルスクラムシステムの構成イメージ
デジタルスクラムシステムの構成イメージ
(出所:ユニ・チャーム)
[画像のクリックで拡大表示]

 同社はコロナ禍前からデジタルスクラムシステムを開発していた。2019年から社内の各部門の要件を分析。コロナ禍が深刻さを増す中、急ピッチで開発を進め、2021年6月から本格的に運用を開始した。

 具体的な利用シーンの1つは、消費者の生活実態の調査だ。同社の商品が日常でどのように使われているか、現地の文化の理解も兼ねて利用者のもとに訪問して行う調査だ。現地の担当者がスマートフォンなどのカメラを持って家庭へ訪問し、商品を使った生活の様子などを撮影する。

 生産現場への技術サポートにも活用する。新しい商品の生産を始める際、従来は日本から開発担当者が現地支援に出向いていたが、それを遠隔サポートに切り替える。現地工場の技術者がヘッドセットとインカムをつけ、日本の担当者とコミュニケーションを取りながら作業を進める。例えば機械の調子が悪いとき、現地担当者はその様子をカメラで写し、日本の担当者はその映像と機械の図面を手元で見ながらメンテナンスの指示を出すことができる。

遠隔地からの映像を確認する担当者
遠隔地からの映像を確認する担当者
(出所:ユニ・チャーム)
[画像のクリックで拡大表示]