全2812文字

 政府が2021年7月に発令した4回目の緊急事態宣言は9月に解除された。新型コロナウイルス感染症拡大の第5波と重なった緊急事態宣言下、政府は、在宅勤務をはじめとするテレワークなどによって出勤者数の7割削減を目指すことを企業などに呼び掛けた。宣言解除後も引き続き出勤者数の7割削減を呼び掛けている。

 政府は2021年7~9月にかけて、テレワークを集中的に実施する全国キャンペーン「テレワーク・デイズ2021」も実施。働き方改革の推進キャンペーンという位置付けだが、東京オリンピック・パラリンピック競技大会で見込まれた交通混雑の緩和や人同士の接触機会の抑制も見据えた。

 2020年春以降、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策の1つとしてテレワークが注目されてきたが、4回目の緊急事態宣言の最中や後で、国内のテレワーク実施率はどうなっているのか。

 1年以上にわたってテレワークの実施状況を追跡してきた調査では、2021年夏以降、「テレワーク実施率は2割台で定着している」という結果が見えている。「テレワーク関連の2つの施策で企業は後手に回っている」といった実態も浮かび上がった。

テレワーク実施率は宣言の最中も後も2割台

 テレワーク実施率は2割台で定着しているという結果を得たのは、日本生産性本部が2021年10月に発表した「第7回 働く人の意識に関する調査」と、パーソル総合研究所が2021年8月に公開した「第五回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」だ。

 日本生産性本部の調査では、テレワーク実施率は22.7%だった。この調査は20歳以上の国内雇用者1100人を対象に2021年10月11~12日まで実施した。緊急事態宣言が全面解除になって10日ほどたった時期である。

日本生産性本部が手掛けた「第7回 働く人の意識に関する調査」のテレワーク実施率の結果
日本生産性本部が手掛けた「第7回 働く人の意識に関する調査」のテレワーク実施率の結果
(出所:日本生産性本部)
[画像のクリックで拡大表示]

 日本生産性本部の柿岡明生産性総合研究センター上席研究員は「調査結果が出る前は、新型コロナウイルスの新規感染者数が急激に減少していたこともあり、テレワーク実施率は10%台に低下すると予想していた。しかし、結果は約2割と、前回調査と変化がなく驚いている」と結果について振り返る。2021年7月に実施した前回調査では20.4%だった。

 テレワーク実施率が低下しなかった背景として、柿岡上席研究員は、首都圏の1都3県をはじめとする自治体が、独自に「リバウンド防止措置」を発令するなどして、企業に対するテレワークの推進要請を続けたことがあるとみる。

 調査でも従業員規模101~1000人の中堅企業や1001人以上の大企業で、前回調査に比べてテレワーク実施率がわずかながら高まっているという。柿岡上席研究員は、「企業も(自治体や個人と同じく)感染リスクは軽減していないと考えてテレワークの体制を維持する意思決定をした」と分析している。

別の調査でも「テレワーク実施率は横ばい」

 パーソル総合研究所は2021年7月30日~8月1日にかけて調査した。4回目の緊急事態宣言とテレワーク・デイズ2021の期間で、2万514人の正社員を対象に調べたテレワーク実施率は全国平均で27.5%だった。

パーソル総合研究所が手掛けた「第五回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」のテレワーク実施率の結果をまとめた資料
パーソル総合研究所が手掛けた「第五回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」のテレワーク実施率の結果をまとめた資料
(出所:パーソル総合研究所)
[画像のクリックで拡大表示]

 前回調査(2020年11月)と比べて2.8ポイント増えたものの、1回目の緊急事態宣言が発令された時期の調査(同年4月)と比べると、0.4ポイント減少する結果となった。パーソル総合研究所の小林祐児上席主任研究員は「テレワーク・デイズの効果もさほどなく、テレワーク実施率は横ばいだった」とする。