ローソンが同社の取り扱う膨大なデータの活用を加速するための新たなデータ統合基盤の構築に取り組んでいる。
2021年10月22日、ローソンの渡邉裕樹ITソリューション本部コーポレートシステム部アシスタントマネージャーがオンラインで開催された「SAS FORUM JAPAN 2021」に登壇、同社のデータ統合基盤構築プロジェクト「METISプロジェクト」を紹介した。ローソンは同社の抱える課題を解消するためにシステム開発のポイントを定め、基盤構築を進めてきた。渡邉アシスタントマネージャーは「ローソンはデータ活用推進でお客様のレコメンドNo1を目指す」と意気込みを語った。
ローソンは全国1万4000店舗の立地などの属性、取り扱うナショナルブランドやプライベートブランドなどの商品情報、Pontaカードやローソンアプリを使っている顧客の情報などの膨大なデータを保持している。これらを収集・分析してローソンの各部門に還元する計画だ。
例えば、本部ではマーケティングや商品開発、店舗開発に活用する。店舗のコンサルティングを担うスーパーバイザーには店舗指導や店舗経営の情報を提供する。店舗には施設やエリアなどの特性を生かした棚割りや、店舗スタッフに向けた情報提供を行う。工場は店舗からの発注を基に商品を作るため、店舗や商品の情報を操業に反映する。同社はこのような形で情報を活用することで、パーソナライズされた顧客体験の実現を目指すとした。
「METIS」は「Managerial Enterprise Transformation Intelligence System」の略語で「ローソン全体のデータ管理、KPIを改革する情報系システムの実現を目指すという意味を持たせた」(渡邉アシスタントマネージャー)。同社のデータ分析高度化の実現において足かせとなっているシステム制約を解消するプロジェクトだ。
同社はデータ分析の高度化で課題となり得る要素を大きく「人材・スキル」「データ活用」「システム基盤」の3つに分類。「人材・スキル」においてはデータ分析人材が既に100人おり、「データ活用」においてはPOS(販売時点情報管理)データを収集できている点、気象などの外部データも活用して100種類のリポートを用途に応じて使い分けている点などから、双方を問題なしと判断した。
一方で「システム基盤」については「人材のスキルや収集したデータの活用を進めて今後高度化することを考えるとシステム上の課題を多数抱えている」(渡邉アシスタントマネージャー)と判断、課題を解決するための施策に乗り出した。
同社は「情報公開ルールやセキュリティー方針に対してシステムが追従できていない」「複数システムにデータが分散し、データ取得が煩雑化・非効率化している」などシステム基盤が抱える課題を抽出し、それらに対して以下6つの主要施策を策定した。ユーザビリティーの向上、権限・アクセス制御、ハードウエア・ソフトウエア老朽化対応、処理能力の向上、取り扱い可能なデータ種・データ粒度の拡充、データ分散化の改善である。