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 「バイオマスプラスチック(バイオプラ)を使うのは企業のイメージアップのため」――。さらりと言うのは、ある自動車メーカーの技術者である。だが、こうした常識が覆りつつある。バイオプラの強度や耐久性が、過酷な環境でも使える水準まで高まってきた。

 バイオプラには、カーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)という追い風も吹く。植物由来を中心とする再生可能な材料を原料とするバイオプラは、石油由来の樹脂に対して二酸化炭素(CO2)排出量の削減で有利になる。

 技術の進化と時代の変化を捉え、自社の“本丸”製品にバイオプラを適用する企業も現れた。ベアリングの世界大手である日本精工(NSK)が、バイオプラを使った転がり軸受を2022年に量産することを決めた。性能要求の厳しい自動車や家電などに向けた部品を用意する。

 バイオプラを適用するのは、軸受の保持器である(図1)。軸受内部の転動体(玉)の間隔を一定に保つ部品で、スムーズな回転を実現する上で重要な役割を担う。NSKによると、保持器の材料にバイオプラのみを使った軸受は「世界初」(同社)という(図2)。

図1 転がり軸受の部品構成
図1 転がり軸受の部品構成
保持器の役割は、転動体(玉)の間隔を一定に保つこと。強度や耐熱性が不十分な樹脂を使うと、高速回転時に遠心力によって保持器が開き、不具合が発生する。(出所:NSK)
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図2 NSKが開発した保持器
図2 NSKが開発した保持器
バイオプラを採用することで、ライフサイクル全体におけるCO2排出量を従来比91%削減した。(写真:NSK)
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 自動車向けの軸受は、2万rpm(1分間当たりの回転数)を超える高速回転に耐えなければならない。軸受を高速で回転させると、玉を保持する冠型の保持器が遠心力で変形し、外輪やシールと接触するという問題が生じるためだ。さらに、100度以上の熱を持つため、保持器の材料には高い機械的強度と耐熱性が求められる。

 NSKは量産中の軸受に、ポリアミド(PA)66樹脂を用いている。従来のバイオプラを使った保持器の試作品では、回転数が2万rpmで温度が120度の試験条件で「PA66の保持器と比べて1.8~2.0倍変形してしまった」(NSKの開発担当者)。この結果を見ると、冒頭の自動車メーカー技術者の発言はうなずける(図3)。

図3 バイオプラでPA66と同等の性能を実現
図3 バイオプラでPA66と同等の性能を実現
従来のバイオプラを用いた保持器では、2万rpmの高速回転に耐えられなかった。(出所:NSK)
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