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 トヨタ自動車は2022年半ばの発売を目指す新型電気自動車(EV)「bZ4X」の試作モデルを、21年11月に公開した。開発を指揮したトヨタZEVファクトリー副本部長の豊島浩二氏は、「EVは本格的な価格競争に突入しつつある」と述べ、コスト競争力が重要との認識を示した。

トヨタ「bZ4X」の試作モデル
トヨタ「bZ4X」の試作モデル
(撮影:日経Automotive)
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 これまでEVは差異化が難しく、コネクテッド機能や自動運転技術、デジタルコックピットなどを組み合わせて特徴を出すことが多かった。しかし、「トヨタは良くも悪くも真面目なので、いかにEVを普及させるか、守るべきところはどこか、お客さんに提供する価値は何かと考え、やっぱり安心・安全で、手ごろな価格、長く乗ってもらうことを何よりも重視した」(同氏)という。

トヨタZEVファクトリー副本部長の豊島浩二氏
トヨタZEVファクトリー副本部長の豊島浩二氏
(撮影:日経Automotive)
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 EVはとにかく電池コストが高い。しかも、電池は製造時の環境負荷が高いため、「必要最小限に抑えることが最も重要」(同氏)と指摘する。bZ4Xは71.4kWhのリチウムイオン電池を搭載し、WLTCモードで500km前後(FWD車)の航続距離を実現する。

 「通常は90~100kWhの電池が必要」(同氏)だが、乗員を直接暖める輻射(ふくしゃ)ヒーターや、高効率のヒートポンプ式エアコン、各種熱マネジメント技術を駆使して省エネ化を図り、電池容量を抑えた。電池はトヨタとパナソニックが共同出資するプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)と、中国・寧徳時代新能源科技(CATL)の製品を採用する。

 電池の劣化を抑制できる技術を盛り込んだ。電池の電圧や電流、温度を多重監視し、10年後の容量維持率を90%に高めることを目指す。「顧客の一番の不安は、EVの電池が劣化して中古車として売るときの価値が下がること。そこをしっかり支えられるのが我々の強みだ」(同氏)とする。

 電池の総電圧は355V。海外メーカーが力を入れる800Vのシステムについては、「技術的には可能だが、半導体チップの耐圧を上げるなど、開発要素が多く、コストが高くなるため、時期尚早」(同氏)とみる。

斜め後ろから見たbZ4X
斜め後ろから見たbZ4X
(撮影:日経Automotive)
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 プラットフォームはSUBARU(スバル)と共同開発したEV専用仕様である。ただし、制御ソフトウエアや電子プラットフォームについては、「日進月歩で進化しているので、開発時点で最新のものを使った」(同氏)という。ソフトや電子プラットフォームについては、ハードのプラットフォームとは別に開発を進めているようだ。bZ4XはOTA(Over The Air)によるソフト更新にも対応しており、ADAS(先進運転支援システム)やマルチメディアシステムで機能を追加・更新できる。

 今回展示した試作モデルは通常の円形ステアリングホイールだったが、一部の車種にはステア・バイ・ワイヤを使った“操縦かん”のような異形ステアリングホイールも用意する。「従来のステアリングでは、なめらかな操作を実現するために、ある程度のクリアランスが必要でダイレクトな操作が難しかった。ステア・バイ・ワイヤではダイレクトな操作が可能となり、乗り味が変わってくる」(同氏)。EVの新たな価値として市場に受け入れられるか検証する。ステア・バイ・ワイヤは日本市場にも投入する予定だ。

bZ4Xのコックピット
bZ4Xのコックピット
(撮影:日経Automotive)
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 bZの名称は「beyond Zero(ゼロを超えた価値)」であり、ゼロエミッションを超える新たな価値を創出する意味合いを込めた。ステア・バイ・ワイヤもその一つだ。ルーフに搭載する太陽電池パネルも、災害時に電力を確保する手段になるなど、新たな価値につながる可能性がある。

ルーフに太陽電池パネルを搭載する
ルーフに太陽電池パネルを搭載する
(撮影:日経Automotive)
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 EVでどのような価値を創出できるかは、「現時点でははっきり見えていない」(同氏)という。「bZ4Xが最終的な答えではない。最先端のクルマなので、さまざまな新しい取り組みを盛り込んでいるが、市場の反応を見ながら、必要ならすぐに変えていく。新たな価値を見出し、それを手の内化して他の車種にも展開する」(同氏)。

 bZ4Xの価格はまだ明らかになっていない。先日発表された日産自動車の新型EV「アリア」のベースモデルは539万円(税込み)だった。bZ4Xで400万円を切る価格を実現できたら、「すごいですよね」(S記者)と振ると、「このクラスのEVで400万円切ってるクルマって、ありますか?ないですよね?じゃあ、やめときましょう(笑)」との反応だった。