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 においの分析技術を開発するレボーン(REVORN)は長崎大学と共同で、法医学の現場で同社の技術を活用する実証実験を進めている。同社のセンサーとAI(人工知能)を用いる分析技術によって、遺体から発生する臭気の分析や、虐待の有無の検証などを行う。法医学分野ではにおいを経験則に基づいて判断要素として用いてきたが、レボーンの技術によって客観的な根拠の1つとして使えるようになる可能性がある。

 レボーンは「においの『なんとなく』をなくす」というミッションを掲げる2016年創業のスタートアップ。独自のIoT(Internet of Things)においセンサー「OBRE(オブレ)」や、においデータの管理プラットフォーム「iinioi cloud(イイニオイクラウド)」を開発・提供している。

IoTにおいセンサー「OBRE」の最新モデル
IoTにおいセンサー「OBRE」の最新モデル
(出所:レボーン)
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 OBREはにおいを吸引するノズルやポンプ、においを計測し電気信号に変換するセンサー、データを送受信するSIMカードなどが一体になったデバイスだ。センサーは水晶振動子でできており、デバイス1台に19種類が搭載されている。

 水晶振動子は感応膜で覆われている。感応膜ににおいの元となる物質が吸着すると、その分の重さによって水晶振動子の振動数が変化する。それぞれの水晶振動子には異なる種類の感応膜が使われているため、あるにおいに対する振動数の変化のパターンも19種類のセンサーごとに異なる。この19個のセンサーにおける変化パターンの総体が、そのにおいの特徴として判別されることになる。

 OBREを使用するにあたって、まずは外気を吸引する。デバイス内部には活性炭フィルターが備え付けられており、このフィルターを通して外気を取り込むことでセンサー部の洗浄を行う。その後に目的のにおいを吸引し、一定時間センサー部で対流させる。センサーの反応が終わったら内部の空気を排気し、再度外気を吸引して洗浄するというのが一連の流れとなる。

 こうして得られたにおいのデータは、iinioi cloudに自動的にアップロードされる。iinioi cloudにはジャンルを問わず様々なにおいデータが蓄積されており、これらを教師データとして機械学習させたAIがクラウド上で稼働している。最終的には、今計測しているにおいが何のにおいと近いのかという分析結果が「バナナとの一致率80%」といった形でOBREの画面に表示される仕組みだ。

iinioi cloudの画面イメージ。あるにおいに対する各センサーの反応パターンが示されている
iinioi cloudの画面イメージ。あるにおいに対する各センサーの反応パターンが示されている
(出所:レボーン)
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 OBREとiinioi cloudを用いた一連のにおい分析技術においてレボーンが特徴的なのは、「脳で感じているにおいという感覚の再現」(同社)をコンセプトとしていることだ。同社の分析過程では、においの元となっている物質の個々の種類や濃度を特定するのではなく、それらの総体が結果としてどう解釈できるかを追求しているといえる。

 人間がにおいを感じるには、においの元となる物質を嗅覚受容体がキャッチするだけではなく、その受容体から発せられる信号の変化を脳が解釈するというステップが必要だ。つまり「においの元となる物質が何種類あって、それぞれがどれくらいの濃度であるか」ということを突き止めても、それはにおいという感覚を理解したことにはならない。

 レボーンによると現在市場で展開されているにおいセンサーの多くは嗅覚受容体を模したものであり、「嗅覚受容体に相当するセンサーに加えて、においの解釈を担う脳に相当するAIを組み合わせた」(レボーン 取締役 商品開発部部長の永田富治氏)とする同社の技術は他に類を見ないものであるという。「納豆のにおいを嗅いでも、それが納豆のにおいであるということは赤ちゃんにはわからない。においという感覚には学習の過程が必要で、AIの構築と通ずるものがある」(永田氏)