千葉大学医学部付属病院は、放射線治療装置に磁気共鳴画像装置(MRI)を組み合わせた新たな装置を使った治療を年内にも始める。MRI画像によって体内の腫瘍の位置をリアルタイムで確認しながら、ピンポイントで放射線を照射できるため、治療効率が大きく向上する可能性がある。
放射線治療とはX線や電子線などの放射線を腫瘍に照射することでがん細胞を破壊する手法で、外科手術による摘出、抗がん剤による薬物療法と並んでがんの三大療法に数えられている。放射線には細胞に含まれるDNAを傷付ける働きがあるため、この性質を利用してがん細胞にダメージを与えて死滅させるというのが基本的な原理だ。
しかし放射線はがん細胞のDNAだけでなく正常組織の細胞まで傷付けてしまう。正常な細胞はがん細胞に比べて傷の修復力は高いが、なるべく正常な細胞にダメージを与えないよう、がん細胞だけを狙えるような高精度放射線治療の工夫が試みられてきた。
腫瘍の位置が正確に分かれば、放射線を照射する範囲を狭め、周囲の正常組織への影響を抑えることができる。正常組織に当たらないのであれば、一度に照射する線量を大きくでき、その結果治療に要する回数や期間を短縮することも可能だ。このため、近年はどれだけ正確に腫瘍の位置を把握しピンポイントに照射できるかという技術開発が進んでいる。
その1つが画像誘導放射線治療である。放射線治療は事前にX線によるコンピューター断層撮影(CT)画像を取得して治療計画を立てるが、周囲の臓器の動きなどによって計画策定時と実際の治療時で腫瘍の位置がずれることがある。この影響を減らすために、放射線照射の直前や治療中に新たに画像を撮影して位置合わせを行い、誤差を補正しながら治療を進める手法が急速に普及しつつある。
こうした画像誘導技術に「パラダイムシフトを起こす」(千葉大学大学院医学研究院 画像診断・放射線腫瘍学 宇野隆教授)と期待されているのが、スウェーデンのElekta社が開発した放射線治療装置「Elekta Unity MR リニアックシステム」だ。従来の画像誘導ではX線CT画像が用いられてきたが、Elekta UnityではMRI画像を補正に使うのが特徴になっている。