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 日本の大手工作機械メーカーの一角に食い込む──。日本電産の永守重信会長が、大胆な「次の一手」を打った。2021年8月に傘下に収めた三菱重工工作機械〔現日本電産マシンツール(滋賀県栗東市)〕に続き、同年11月18日にOKKの買収を決めた。大正4年(1915)年生まれ、創業106年目の老舗の中堅工作機械メーカーを約55億円で傘下に収める。

日本電産の永守会長
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日本電産の永守会長
OKKを買収し、製品ラインアップを広げて大手工作機械メーカーの一角を狙う。(写真:日経クロステック)

 永守会長は同年10月、工作機械事業の売上高を26年3月期に1000億円に伸ばす目標を打ち出した。この数字に今回の「OKKの買収の分は含まれていない。同社の売り上げを回復させ、さらに伸ばせば、早い段階で売上高1000億円は楽に超える」(日本電産)。

「1番以外は皆ビリや」

 永守会長はさらにその先を狙う。同会長は21年11月18日、工作機械事業の売上高の目標を2倍以上に引き上げたもようだ。これを実現すれば、業界3位のオークマと4位の牧野フライス製作所を抜く可能性が出てくる(業界2位のヤマザキマザックは非上場のため、売上高は不明)。永守会長の打ち出した「売上高の新たな目標は、恐らく(オークマを抜いて)トップ3に浮上することを意識したものだろう」(日本電産)。

 ただし、これも永守会長にとっては次のステップに過ぎない可能性がある。「1番以外は皆ビリや」というのが同会長の口癖だからだ。工作機械業界のトップはDMG森精機だ。「まだ社内で明言こそしていないが、会長の頭の中には当然、それ(DMG森精機を抜いて1番になるという目標)があると思う」(日本電産)。

 DMG森精機は、2018年12月期に売上高が5000億円を超えてピークに達したが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で19年12月期は3280億円に落ち込んだ。回復基調にはあるものの、21年12月期の売上高は3800億円の見込みとなっている。日本電産が持つ買収企業の再生・成長力と、一層のM&A(合併・買収)力を駆使すれば、近い将来に工作機械業界の最大手であり世界一でもあるDMG森精機の座を脅かす存在にまでのし上がる可能性も否定できない。

グローバル化に失敗したOKK

 日本電産が今回買収を決めたOKKは、日本の中規模工作機械メーカーだ。小型から中型のマシニングセンター(MC)をメインに、加工品質や安定性の高さで顧客ニーズを満たしてきた。だが、肝心の営業面でつまずいた。主因はグローバル展開の遅れだ。

OKKの工作機械
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OKKの工作機械
小型・中型MCを主力とする。(出所:OKKのWebサイト)

 大手工作機械メーカーが海外市場での売り上げを伸ばす中、OKKは国内市場中心の販売から脱せず、海外市場の受注を増やせなかった。おまけに国内の顧客が生産の海外シフトを加速させたため、OKKの国内市場の売り上げは縮小。たまらず在庫の削減や損益分岐点の引き下げ、製造部門からサービス部門への人員の配置転換による営業力の強化といった施策に取り組んだが、追いつかなかった。

 結果、19年3月期に6億3000万円だった営業利益は、20年3月期には1億4000万円と大きく落ち込んだ。さらに翌21年3月期には新型コロナ禍の影響が加わり、27億5500万円の営業赤字に転落している。22年3月期も3億4000万円の営業赤字の予想だ。

 売上高も新型コロナ禍前の213億円(20年3月期)から、22年3月期には157億円にまで落ち込む見込みとなっている。売り上げが大幅に落ちた赤字会社であるOKKを、なぜ永守会長は買収したのか。