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 遠隔監視のみの無人運転化に向けて日本のMaaS(Mobility as a Service)の開発が加速している。

 ホンダは2020年代半ばの、レベル4対応の「自動運転モビリティサービス」の事業化を見据え、技術実証を21年9月に宇都宮市と栃木県芳賀町で開始した(図1)。日産自動車も無人運転によるMaaSの実用化を目指し、同月から自動運転システムを監視するオペレーター同乗なしのオンデマンド配車の実証実験を開始している(図2)。

図1 ホンダが20年代半ばの事業化を見据えるレベル4対応の「自動運転モビリティサービス」のイメージ
図1 ホンダが20年代半ばの事業化を見据えるレベル4対応の「自動運転モビリティサービス」のイメージ
米General Motors(ゼネラル・モーターズ、GM)子会社でホンダも出資する米GM Cruise(GMクルーズ)の自動運転車両「クルーズ・オリジン」の利用を想定する。(出所:ホンダ)
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図2 日産が横浜のみなとみらいおよび中華街エリアの実証実験で使った自動運転車両
図2 日産が横浜のみなとみらいおよび中華街エリアの実証実験で使った自動運転車両
実証実験はNTTドコモと共同で実施した。(出所:日産自動車)
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 21年夏に東京五輪・パラリンピックの選手村において、自動運転シャトル「e-Palette」を用いたレベル4相当の移動サービスを提供したトヨタ自動車も、複数のエリア・地域でのMaaSの商用化を目指す(図3*1。同社は20年12月に開いた記者説明会で、その目標時期を20年代前半としている。そうした商用化に向けて、同社は、静岡県裾野市に現在構築中の未来型実験都市「Woven City(ウーブン・シティ)」を使い、人々が生活を送るリアルな環境でe-Paletteを走らせることで、より安全・安心・快適なMaaSを提供できるように進化させていく。

図3 トヨタが東京五輪・パラリンピックでの提供を目指して開発した自動運転シャトル「e-Palette」
図3 トヨタが東京五輪・パラリンピックでの提供を目指して開発した自動運転シャトル「e-Palette」
レベル4相当の東京五輪・パラリンピック仕様とされる。(出所:トヨタ自動車)
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*1 東京五輪・パラリンピックの選手村では、パラリンピックに出場予定だった視覚障害を持つ選手とe-Paletteが接触事故を起こすという不幸な事態が発生した。トヨタは、対策を講じて移動サービスの再開を果たしたが、商用化に向けては、同様の事故が再び発生しないように、徹底した原因究明と再発防止が欠かせない。

BOLDLY、22年度中にレベル4が実現か

 こうした既存の自動車メーカーの動きに加え、自動車メーカー以外の企業や自治体においても無人運転化に向けたMaaSの開発が活発化している。

 例えば、BOLDLY(東京・港)である。同社は、自動運転技術の社会実装を目指す企業として、東京・羽田の大規模複合施設「HANEDA INNOVATION CITY」や茨城県境町などにおいて、自動運転シャトルによるレベル2の移動サービスの提供に関わっている(図4)。21年には、HANEDA INNOVATION CITYにおいて、遠隔監視のみのレベル4相当の自動走行実験を成功させている*2

図4 BOLDLYなどが茨城県境町で提供している自動運転シャトルによる移動サービスの様子
図4 BOLDLYなどが茨城県境町で提供している自動運転シャトルによる移動サービスの様子
現在はレベル2でサービスを実施しているが、22年度中に遠隔監視のみのレベル4を実現する目標だ。(出所:BOLDLY)
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*2 同実験は、羽田みらい開発(東京・大田)、鹿島、マクニカ、日本交通(東京・千代田)とともに実施した。

 同社によれば、技術的には“レベル4Ready”(レベル4の準備が整った)の段階まで到達している。今後は、レベル4に対する法制度などの整備が間に合えば、22年度中に茨城県境町とHANEDA INNOVATION CITYの2カ所で遠隔監視のみのレベル4を実現し、23年度には他地域に横展開を図る計画とする。