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 業務用エアコンの省エネ性能の開発不正が発覚した三菱電機。既報の通り、2011年に発売した業務用エアコンにおいて、省エネ性能の指標であるCOP(エネルギー消費効率)値を実力よりも高く偽装して販売していた。省エネ性能の不正は電気代に直結するため、深刻な問題に発展し得る。三菱電機の行った偽装が一体どれくらいの影響を及ぼすのか。関係者の証言を基に、電気代に換算してみた。

11年発売の業務用エアコン「シティマルチY GR〈高COPシリーズ〉」
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11年発売の業務用エアコン「シティマルチY GR〈高COPシリーズ〉」
「業界トップクラスの高い省エネ性を実現」と紹介している。(出所:三菱電機)

 偽装分の電気代を求める前提は次の通り。三菱電機は、高効率タイプの10馬力(定格冷房能力28kW)製品「シティマルチY GR〈高COPシリーズ〉PUHY-EP280DM-G」(以下、11年モデル)において、計算による定格冷房COP値(以下、定格COP値)の実力値「2.78」に対し、カタログには約1.3倍に高めた「3.61」を記載していた。ただし、この定格COP値から「偽装分の電気代」を割り出すと、「夏季に偏った電気代になる」(同社の関係者)という。そこで、COPよりも顧客の実際の使用状況に近づけた省エネ指標であるAPF(通年エネルギー消費効率)を使って電気代を計算する。

APFは実力値4.81を「5.4」とかさ上げ

 三菱電機は13年に、熱交換器の銅製円管を11年モデルの48段(配管の本数)から60段に増やした10馬力製品「シティマルチY GR〈高効率シリーズ〉PUHY-EP280DMG2」(以下、13年モデル)を発売した。関係者によれば、同社はそれまでJISの許容する「緩い誤差」、具体的には空調能力10%減と消費電力5%減の許容域を自社に都合良く使ってCOP値のかさ上げ操作を行ってきた(13年当時のJIS規定)。だが、13年モデルではこのうち空調能力10%減のインチキを是正したという。そこで、このAPF値「5.2」を基準に、偽装分の電気代を求めることにする。

11年モデル(上)と13年モデル(下)のカタログ
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11年モデル(上)と13年モデル(下)のカタログ
11年モデルの省エネ性能の偽装による電気代(偽装分の電気代)を計算するためにAPF値を使う。13年モデルのAPF値は「5.2」となっている。これは空調能力10%減のかさ上げ行為をやめた数値。これを基に偽装分の電気代を計算していく。三菱電機のカタログに日経クロステックがマーキングした。

 同社は11年モデルのAPF値を「5.4」とカタログに記載している。段数を増やして省エネ性能を高めた13年モデルよりもAPF値が高くなっているのは、「定格COP値と同様に、11年モデルではAPF値も偽装した」(関係者)疑いが強い。

 そこで、11年モデルのAPFの実力値を求める。13年モデルは11年モデルに対して「APF値で2.5%程度、省エネ性能を高めている」(関係者)という。また、三菱電機の業務用エアコンの開発では「消費電力5%減によるCOP値のかさ上げ操作は続いていた」(関係者)ことから、それも考慮する。すると、

11年モデルのAPFの実力値 = 13年モデルのAPF値 × 0.975(省エネ性能の約2.5%向上分) × 0.95(消費電力5%減の是正分)

となるため、

11年モデルのAPFの実力値 = 5.2 × 0.975 × 0.95
             = 4.81

となる。