電気自動車(EV)の電池「交換式」普及に向けて、国内で2つの陣営が動きだした。充電の手間がなくなり、開発競争が進む電池が古くなれば即座に取り換えられる。このように電池交換式EVは利点が多いものの、“苦い過去”がちらつく。実証実験の壁を越えられるか。
2025年の事業化を目指すのは、伊藤忠商事といすゞ自動車などのコンソーシアムだ。コンビニエンスストアの配送トラックに狙いを定めた。18年ごろから電池交換式EVの開発を進めてきたいすゞの知見を生かし、ファミリーマートで22年度下旬から試験運用を進める予定だ。
同陣営の後を追うのが、ENEOSである。21年6月にEV電池交換システムを手がける米スタートアップのAmple(アンプル)と提携した。タクシーや物流トラック向けに22年度中に国内での実証を開始し、自動車メーカーの参画を働きかけていく(図1)。
過去の失敗を糧にできるか
重要なのは実証実験の先。事業として収益を確保するために、伊藤忠やENEOSは知恵を絞る。両社が参考するのが、8年前の「ある失敗」だ。
それが、電池交換方式を開発する米スタートアップBetter Place(ベタープレイス)の挫折である。8億ドル(1ドル=110円換算で880億円)を超える資金を調達したが、13年に倒産した。日本でも電池交換ステーションの試作機を披露したものの、事業化には至らなかった。
伊藤忠とENEOSはこの失敗を繰り返さないため、挫折の原因を分析した。そこから見えてきたのは、成功に必要な3つの条件である。(1)商用車への注力、(2)自動車メーカーとの協力、(3)標準化など低コスト化戦略――だ。順に解説していこう。