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 国内外の150社に提案し、100社ほどが商品化を検討中──。日本製鉄が開発しためっき鋼板「FeLuce(フェルーチェ)」が今、顧客の開発現場で人気を集めている。その理由は意匠性の高さと低コストにある。

新しいめっき鋼板を使った製品サンプル
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新しいめっき鋼板を使った製品サンプル
製品外観の高級化志向を狙う。「第12回 高機能素材Week」(2021年12月8~10日、幕張メッセ)に日本製鉄が出展した。(写真:日経クロステック)

 表面に施したヘアライン(単一方向の細い筋目模様)が表現する光沢が高級感を与える上に、コストは同様の加工を施したステンレス鋼板の約1/2と低い。この利点に、家電製品や鋼材家具、内装建材などのメーカーが飛びつき、「商品化に向けた開発や試作などを展開中。早ければ来年(2022年)にはFeLuceを使った商品が販売されるのではないか」と日本製鉄は期待を寄せる。

ヘアライン調の外観
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ヘアライン調の外観
冷蔵庫のドアサンプルに使った新しいめっき鋼板の表面。ヘアライン仕上げしたステンレス鋼板と同等の高級感を付与する。(写真:日経クロステック)

 同社は今、材料の高付加価値化に懸命になっている。めっき鋼板のような汎用的な素材では、中国メーカーの価格競争力に負けてしまう。そのため、生き残りを懸け、持ち前の技術力を駆使して、中国メーカーにはまねのできない付加価値を備えた新材料の開発に躍起になっている。新しいめっき鋼板は同社のこうした危機感から生まれた好例と言える。

3μm厚のめっき層にヘアライン加工

 新しいめっき鋼板の“正体”は、ヘアライン調電気亜鉛ニッケル合金めっき鋼板。断面は3層構造で、母材である鋼板の表面に、亜鉛ニッケル合金めっき層があり、さらにその上に薄膜樹脂コートが載っている。

新しいめっき鋼板の断面
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新しいめっき鋼板の断面
母材である鋼板の表面の上に亜鉛ニッケル合金めっき層があり、さらにその上に薄膜樹脂コートがある。(写真:日経クロステック)

 このうち、亜鉛ニッケル合金めっき層に、従来の機能である防錆(ぼうせい)機能に加えて意匠性を持たせたのが、新しいめっき鋼板の最大の特徴である。約3μmと薄い亜鉛ニッケル合金めっき層に、研削ブラシを使ってヘアライン加工を施す。削り過ぎるとさびが発生してしまい、浅過ぎると意匠性を損なう。そのため、母材に達しない深さで「均一な光沢が得られる造り込み」(日本製鉄)に腐心したという。

 薄膜樹脂コートの厚さも数μmと薄い。薄膜樹脂コートの機能は、ヘアラインが生み出す外観品質(光沢)の維持と、耐指紋性と耐薬品性など製品化の際に必要となる諸性能を満たすことだ。同社は、この薄膜樹脂コートを安定的に塗装する技術を確立するのに試行錯誤したという。ただし、樹脂の種類については明かしていない。

 製品の外観デザインの自由度が高いことも、顧客から好評を得ている理由の1つとなっている。