識別IDを内蔵した埋め込み型マイクロチップを手掛けるメディホーム(東京・渋谷)は、日本医科大学千葉北総病院と共同で医療分野への展開に向けた検討を始めた。救急分野でどのように活用できるかを探る。まずは利用者の抵抗感の少ない、体に貼り付けるタイプのマイクロチップを利用して検討を進めていく。
千葉北総病院 救命救急センターの本村友一 病院講師は、救急救命の際に本人確認の限界を感じてきた。事故の衝撃で所持品が散失した意識不明の患者が搬送されることがあるからだ。身元確認ができないと、治療歴やアレルギー情報などを確認できず適切な治療の選択が困難になったり、治療の同意を得るための家族への連絡ができなかったりする。
「患者から離れず安全に情報を参照できる方法が必要だ。埋め込み型マイクロチップは選択肢の1つ」と本村医師は話す。いきなり患者にマイクロチップを埋め込むのはハードルが高いため、まずは体に貼り付けるシール型のマイクロチップなどを活用して検証する。
メディホームが扱うのは、個人特定のための識別IDを内蔵したマイクロチップだ。同社はスウェーデンBiohax Internationalと業務提携し、日本での実用化を目指している。2mm×12mmほどの小型チップで、専用の注射器で手の甲に埋め込む。日本で実用化する際は、専用の注射器について医療機器の認証を得る必要がある。
マイクロチップは近距離無線通信規格の1つであるNFC(Near Field Communication)の技術を用いており、スマホなど使って識別IDを読み取る。識別IDはサーバーに登録した情報を閲覧するために必要だ。医療分野の場合は、これまでの病歴や飲んでいる薬剤、アレルギーの情報などのデータ登録を検討しているという。
認証されたスマホ以外でマイクロチップを読み取ろうとすると、エラーが表示されて情報を参照できない仕組みになっている。マイクロチップは利用者IDとひも付いており、利用者IDでアプリにログインしてからスマホで読み取る。マイクロチップ内の識別IDと利用者IDが一致していることを確認できれば、サーバーの情報へのアクセスが可能になる。医療機関が患者のマイクロチップを読み取る場合は、事前に患者の同意を得た上で管理者権限のIDでログインして情報を読み取る。