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 トヨタ自動車(以下、トヨタ)は2021年12月14日、電気自動車(EV)の戦略に関する説明会を開いた。2030年までに30車種のEVを市場投入し、同年に世界のEV販売可能台数を350万台に引き上げて、2次電池の生産能力を280GWhまで増やせるようにする。高級車「レクサス」については35年以降、全車種をEVにする計画だ。会場では報道陣からの質問に、同社代表取締役社長の豊田章男氏(以下、豊田社長)をはじめChief Branding Officer/Lexus Internationalプレジデントの佐藤恒治氏、Chief Technology Officerの前田昌彦氏、クルマ開発センターデザイン領域統括部長のサイモン・ハンフリーズ氏が回答した。その後編。

なぜEV100%じゃないのか?

世界一の自動車メーカーであるトヨタが目指すEVの比率が、どうして35%なのか。なぜ100%ではないのか。2030年時点のEVの世界販売台数が350万台で十分とトヨタが考える理由は?

豊田社長:我々は2035年を見据えて、できる限りカーボンニュートラルビークルを増やしていきたい。ところが、現実には、カーボンニュートラルを達成するには、各国のエネルギー事情が大きな影響を及ぼしている。これはトヨタにはどうしようもないということを理解してほしい。

(写真:日経クロステック)
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(写真:日経クロステック)

 トヨタが仮に、エネルギー事情や充電設備が整っていない所に、選択肢の幅を広げたら(EVを販売したら)、実際にクルマを使う顧客はどのような状況に陥るか。大変不便な状況に陥るだろう。それは我々としては避けたい。

 理解してほしいのは、トヨタは非常に多様化されたグローバル市場を相手にしているということだ。多様な状況には多様なソリューションが必要だ。また、平均的な人に対する最善策は、決して全ての人にとっての最善策ではないと我々は思っている。従って、現在の正解がなく不確実な時代に対しては、多様な解決策で臨ませてほしい。そして、その多様な解決策の中で、我々はどのメニューに対しても一生懸命に取り組んでおり、仕入れ先や関係会社を含めて共に戦っていきたい。

佐藤氏:カーボンニュートラルは最終的にはエネルギーセキュリティーの問題と密接に関わってくる。各地域のエネルギー事情や顧客のクルマの使い方、実際のニーズをバランス良く考えていく必要がある。その中で、例えばエネルギーは「作る」「運ぶ」「使う」というライフサイクルで物を考えていく必要があると思う。

 クルマの使用環境も地域によって違う。例えば、米国や欧州では平均的な走行距離が長いが、日本は短い。従って、「使う」の部分のライフサイクルへのインパクトも地域によって変わってくる。インフラの整備(状況)もその(整備する)スピードも違う。これらを総合的に見つつ、(クルマの)ベストミックスをつくりながら計画を進めていくのが、我々が考えていることだ。

 我々はアジャイル(素早く)に動く体力づくりをずっとやってきた。当然、(EVを取り巻く)状況が大きく変わっていくようであれば、その状況を見ながらどんどん戦略的に動いていく。それくらい強い意志を持って未来をつくっていこうとしている情熱を今日は感じ取ってほしい。

前田氏:逆に今、EVが最も普及している地域はどこかという観点で見てみる必要があるのではないか。例えば、ノルウェーでは乗用車の6~7割がEVになっている。ここまでEVが普及する背景には、やはり、かなり税務的なメリットや、駐車場や通行の無料化など、通常のクルマと比べて優遇されているという現実がある。これはユーザーにとって利便性があるということではないか。

 こうした税制やルールは、我々だけではどうしても制御しきれない要素。しかし、この要素が顧客の選択肢の中に入っているということを、我々は冷静に見なければならない。そうした観点から、今日は我々がこれからしっかりやっていくという意志を示した。加えて、顧客はエネルギー事情などの置かれた環境を踏まえてクルマを選択する。そのバランスがどこに来るのかを見極めながら、少しずつ進んでいくことはどうしても避けられない。

 従って、我々としては変化に対して適応しやすくなるように、できる限りリードタイムを短くして、いろいろな準備ができるようにすることがとても大切だと思う。