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 日産自動車が栃木工場に導入した「ニッサンインテリジェントファクトリー」(以下NIF)は、同社が開発した最新の生産技術を数多く組み込んでいる。既にSUV(多目的スポーツ車)タイプの新型電気自動車(EV)「アリア」をNIFで造り始めており、同社執行役副社長で生産・SCM担当の坂本秀行氏が「明日の日産の飛躍の要になる」とするほどだ。今回は、MR(複合現実)技術を活用して作業の習熟期間や指導工数を大幅に削減した人材育成の取り組みを紹介する。

 ロボットによる自動化はNIFの大きな特徴の1つではあるが、工場設備の不具合発生を未然に防ぎ、不具合発生時には短時間で復旧させる保全員のように人の力は不可欠だ。組み立てや検査の工程でも人材育成は重要な課題となっている。

MR技術で習熟期間を短縮

 NIFでは、デジタル技術を活用して早期の作業習熟を実現する「インテリジェント作業支援システム(IOSS:Intelligent Operation Support System)」を導入した。組み立てや検査といった作業の習熟期間を10日から5日へと50%減、指導工数を10時間から1時間へと90%減を実現した。

 特徴的なのは、MR(複合現実)技術を活用する点だ。MRゴーグルを装着した作業者が、現場で作業ガイドを見ながら作業訓練を自習できる(図1)。作業ガイドのコンテンツはプログラムレスで簡単に作成できるようにした。

図1 MRを活用した作業支援システムで訓練している様子
図1 MRを活用した作業支援システムで訓練している様子
MRゴーグルを装着し、表示される作業ガイドを見ながら1人でも作業訓練を学習できる。(出所:日経クロステック)
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 従来は紙の作業標準書やマニュアル、熟練者の作業を録画したビデオを見て作業内容を覚えた後、実際のラインで作業訓練を行っていた。このため、複雑な作業や長い作業を正しく覚えるのに時間がかかっていた。作業訓練の現場では指導する熟練者がつきっきりになるのも課題だった。

 IOSSでは、MR技術を使って現物の周囲に作業箇所や作業内容、注意ポイントといったさまざまな情報を表示できる。実際の活用例をみてみよう。