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 日産自動車が栃木工場に導入した「ニッサンインテリジェントファクトリー」(以下NIF)は、同社が開発した最新の生産技術を数多く組み込んでいる。既にSUV(多目的スポーツ車)タイプの新型電気自動車(EV)「アリア」をNIFで造り始めており、同社執行役副社長で生産・SCM担当の坂本秀行氏が「明日の日産の飛躍の要になる」とするほどだ。今回は、工場の稼働状況を一括管理して不具合発生を未然防止しつつ、短時間での復旧を実現するリモートメンテナンスの仕組みを紹介する。

 自動化を大きく進めたNIFを円滑に運営するため、工場建屋の2階に設けたのが集中管理室である(図1)。27枚のディスプレーをつないだ大画面を壁一面に設置し、NIFの全設備の状態をリアルタイムで把握。設備の故障を未然に防ぐ予防保全と、現場の保全員を遠隔支援してトラブル時の復旧時間を短くするリモートメンテナンスの中心となる。

図1 工場内の設備の状況を把握する集中管理室
図1 工場内の設備の状況を把握する集中管理室
工場内の全設備の稼働状況などを集中管理する。熟練者を配置し、トラブル発生時には現場に最適な復旧方法をリモートで指示する。(出所:日経クロステック)
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 NIFの設備やロボットには1600を超えるセンサーが組み込まれており、ワイヤレス通信も活用しながら設備状態に関する情報を100分の1秒単位で常時計測・監視し、一元管理している。電流や電圧、振動といった測定データは8600種類を超えるという。また、設備自体を監視する270台超のWebカメラも接続してあり、リアルタイムでの状況だけでなく、録画データで過去の状況も確認可能だ。

 設備が正常に動いているかどうかは画面に表示されるものの、膨大なデータを人がリアルタイムで判断するのは難しい。NIFでは設備故障などのエラーが発生すると自動でアラートを出し、「どのロボットのどのセンサーがどのようなエラーを出したのか」といった内容も画面上で確認できる。従来は、こうした詳細な状況を把握するために現場へ人が行く必要があった。

 この他、故障の兆候を自動検知するため、人工知能(AI)技術を活用した「上下値診断」「周波数解析」「波形診断」といったさまざまな診断方法も導入している。

保全員を遠隔サポート

 予防保全の取り組みを進めているとはいえ、現実にはさまざまな要因で設備の故障は発生する。NIFでは設備メンテナンスを遠隔支援する仕組みを導入し、設備が故障した際の復旧時間を従来比で30%削減している(図2)。

図2 集中管理室からのリモートメンテナンス
図2 集中管理室からのリモートメンテナンス
集中管理室にいる高技能者はカメラなどから得られる現場の情報を見ながら、復旧作業を遠隔支援する。(出所:日経クロステック)
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