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 「以前はクラウド上に各ベンダーが提供するミドルウエアをインストールして分析環境を構築していた。だがメンテナンスの負荷が高く、月に一度メンテナンスタイムとして稼働を止めていた」。ヤマト運輸の中林紀彦執行役員デジタル機能本部デジタルデータ戦略担当は、同社が以前運用していた分析環境をこう語る。

 ヤマトホールディングス(HD)は2020年1月に、ヤマトグループにおける中長期の経営のグランドデザインとして経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」を発表した。事業構造と基盤構造でそれぞれ3つずつを構造改革の対象とし、事業構造改革としては「宅急便のデジタルトランスフォーメーション」や「ECエコシステムの確立」、「法人向け物流事業の強化」を掲げている。

 同社はさらに、基盤構造改革の1つとしてデータドリブン経営への転換を目指す。ヤマトグループは2021年4月に主要事業会社7社をヤマト運輸に統合し、同グループにおけるデジタル活用の新たな基盤として米Microsoft(マイクロソフト)のAzureを全面採用した「Yamato Digital Platform(YDP)」を構築した。中林執行役員はヤマトグループのデジタル戦略について「各事業会社で既に稼働しているシステムをリニューアルしたり新たにシステムを開発したりする場合は、すべて新しい基盤上に構築する予定だ」と語る。

ヤマトホールディングスが2020年1月に発表した経営指針「YAMATO NEXT100」の概要
ヤマトホールディングスが2020年1月に発表した経営指針「YAMATO NEXT100」の概要
(出所:ヤマトホールディングス)
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クラウドの利点を生かせていなかった

 YAMATO NEXT100を発表する以前から、ヤマト運輸はクラウド上にデータ分析環境「クロネコ・ビッグデータ基盤(KBD基盤)」を構築し運用していた。新たに開発した分析システムのテスト環境として同基盤を活用していたが、メンテナンス負荷が大きいことが課題だったという。負荷が大きかった原因について中林執行役員は「以前はIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)を使っていたことが原因の1つだ」と語る。

 具体的にはクラウド上に各ベンダーが提供するデータベースやETL機能を備えたミドルウエアなどをインストールして運用していた。そのため担当者が手動でミドルウエアに搭載したOSのパッチを適用したり、データベースが利用するリソースを管理したりしてメンテナンスする必要があった。中林執行役員は「これまではクラウド上にデータ分析環境を構築していたものの、クラウドのアーキテクチャーとしてうまく活用できていなかった」と振り返る。

 そこで同社はKBD基盤の刷新にあたり、ベンダーがミドルウエアまで提供するPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)の採用に踏み切った。採用したのはマイクロソフトのデータ分析サービス「Azure Synapse Analytics」だ。ヤマト運輸は配送サービスなどの基盤にAzureを採用し、デジタルの基盤に据えている。ユーザー側でメンテナンスが不要なことや、データの量に応じて自由にスケールできる点を評価したという。

 中林執行役員がヤマト運輸に入社した2019年8月にヤマトグループ統一のデータ基盤であるYDPを構築するクラウドの選定を始め、2019年12月頃にAzureの採用を決定した。その後YAMATO NEXT100を発表した2020年1月にYDPの構築と、データ分析基盤であるKBD基盤のリニューアルを本格的に開始した。