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 2021年11月、ITコーディネータ協会が発表したDX(デジタルトランスフォーメーション)表彰で初代最優秀賞を獲得した運送・機械機器設置業のヒサノ。熊本市に本社を置く同社は、経済産業省から「情報処理の促進に関する法律第三十一条に基づく認定企業(DX認定企業)」としての認定も受けている。

 同社を率いる久保誠社長は「ITベンダーの話していることの意味が分からず、FAXが放つピーヒャラという電子音と同じように聞こえていた。正直、ITに興味が持てなかった」という過去を持つ。しかし、今回の受賞のきっかけとなった「横便箋システム」の構築、支援したITコーディネータとの協業を経てその考え方は大きく変わり、今では「従業員にこれからはシステムに合わせて働き方を変えていかなければいけないと話している」(久保社長)。

 ヒサノは主に半導体製造装置やPCR検査機器など、さまざまな精密機械の輸送・搬入・設置を担う。横便箋システムは、それらの作業に必要な配車や人員配置、受注情報などの管理をデジタル化したものだ。米Microsoft(マイクロソフト)のクラウドサービスであるMicrosoft Azure上に構築した。以前は熊本と福岡の事業所がそれぞれ紙で管理しており、互いの状況は電話で確認していた。久保社長は「紙の管理では繁忙期にオーバーブッキングが起きたり、未確定で書き込んでいなかった大型プロジェクトで急に人が必要になったりと、リソース配置上の課題があった」と明かす。

以前使っていた横便箋(紙)。顧客名や場所、作業内容などが記載されている
以前使っていた横便箋(紙)。顧客名や場所、作業内容などが記載されている
(撮影:日経クロステック)
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 横便箋システムでは、指定した日付にどの車両で、誰が、どの時間帯に、何の作業をするかを時間軸に沿って確認できる。月の予定を一覧表示で見ることも可能だ。熊本と福岡の事業所で同じ情報を見られるため「熊本のリソースがいっぱいなら、この案件は福岡から人を派遣しよう、という調整が簡単にできるようになった」(久保社長)。システムには同社の車両情報、作業員の持っている免許や作業のスキルレベルなども登録している。作業内容や必要人数、時間帯などの条件を入力すると横便箋システムが自動で車両と作業員を配置する。

横便箋システムの画面イメージ
横便箋システムの画面イメージ
(出所:ヒサノ)
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 横便箋システムは既存のパッケージシステムを使わず、スクラッチで開発した。宅配便などと異なり、ヒサノの業務は現場によって必要となる車両や作業員の人数、スキルが異なる。午前中は2台のトラック、4人で作業をしていたチームが、午後には2人ずつに分かれて別の現場に行く、あるいは別のチームと合流するといった柔軟な配置が必要となる。この複雑性にパッケージでは対応できなかった。

半導体製造装置搬入のための機材を積み込む様子
半導体製造装置搬入のための機材を積み込む様子
(出所:ヒサノ)
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