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 東芝は2021年12月、亜酸化銅(Cu2O)をp型半導体とする太陽電池(Cu2O太陽電池)で変換効率8.4%を達成したと発表した。この値は2017年に金沢工業大学が発表した8.23%を上回り、世界最高水準とみられる。このCu2O太陽電池を結晶Si太陽電池に重ねて「4端子タンデム」にした太陽電池の総合的な変換効率は27.4%と試算できるという。今後同社はこの4端子タンデムの変換効率を30%に引き上げて、車載用太陽電池として使っていく考え。晴天であれば燃料や系統電力からの充電なしで1日当たり約39km走行できるEVを実現可能だとする注1)

†4端子タンデム=2種類の太陽電池を上下に重ねているが、電気的にはつながっていないタイプのタンデム(連結)型太陽電池。
注1)この走行距離の計算には、クルマへの太陽電池の実装面積3.33m2、電費が12.5km/kWhという仮定を用いている。変換効率が30%の場合、この太陽電池の出力は最大で約1kW。蓄電池を使わずこの出力だけでEVを駆動すると、1時間で1kWhなので、走行速度は最高12.5km/時。平均速度は日経クロステック推定で約6km/時と速足で歩くぐらいのスピードとなる。このため、蓄電池なしというのは現実的ではない。仮に蓄電池を搭載したEVであれば、晴天時1日分の日射で、約3.1kWhを取り出せる形で蓄電できるとする。これは、時速50kmなら、約47分走行できる電力量に相当する。毎日晴天で、駐停車時および走行時のほとんどでEVが日射下にあり、エアコンなしでしかも1日片道20分ほどの街乗りであれば、電力系統からの充電が要らないことになる。
EVに実装する場合のイメージ
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EVに実装する場合のイメージ
(図:東芝)