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 オーストラリアは再生可能エネルギーと蓄電システムの大量導入を積極的に進めている。その動きを大きく加速させたのが、同国とドイツの研究者グループによる2019年9月の提言だった。同グループは2050年までのオーストラリアのエネルギー源について5段階のシナリオを想定。その中で再生可能エネルギーを最大限導入するシナリオでは、2050年に同国の電力需要量の200%を再生可能エネルギーでまかなえると提言した。

2019年の電力需要量の4.1倍を導入か

 電力需要量の200%といっても、2019年時点の同国の電力需要量の2倍ではない。経済成長や石油など化石燃料を動力源として使っているさまざまな産業部門の相当部分が電化することを織り込んだうえでの200%で、2019年時点の電力需要量に対しては410%に相当する。

 電力系統には電力の供給と需要が常に一致していなければならない「同時同量則」があり、需要量の100%を大きく超える再生可能エネルギーは一見それに反する。超過分は(1)蓄電池にためる、(2)再生可能エネルギーの季節間などの長期的な出力変動に備えて備蓄する、(3)シンガポールなど他国に海底送電線などで輸出する、(4)電力を水素やアンモニアに変えてそれらを燃料とする火力発電や鉄鋼の精製、燃料電池車や列車などに利用する、(5)水素やアンモニアを日本や韓国などに輸出する、などの対策で同時同量則の制約を回避する戦略だ。

 実際、オーストラリアでは再生可能エネルギーの導入が急速に進み、特に正午前後は太陽光発電の出力が支配的になってきた(図1)。この図を外挿すると2030年前後には少なくとも正午前後は太陽光発電だけでほぼ100%になる。再生可能エネルギーの導入は加速する一方で、最近、オーストラリアの電力系統を管理する事業者Australian Energy Market Operator(AEMO)は、2025年にも正午前後は太陽光発電だけで電力需要がまかなえるようになるという見通しを発表した。

図1 2030年ごろには昼は太陽光発電だけでまかなえるように
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図1 2030年ごろには昼は太陽光発電だけでまかなえるように
タスマニア州を除くオーストラリアにおける昼前後の太陽光発電の出力(オレンジ色)とそれ以外の発電出力の推移と今後の予測。POE(Probability of Exceedance、超過予測)は降水確率に似た定義の確率。赤色の点線がメインシナリオ。一方、緑色の点線は、ガソリン車などこれまで化石燃料ベースだった内燃機関の、EVなどへの電化が想定以上に進まなかった場合を指す。(図: Australian Energy Market Operator)