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 車載用リチウムイオン2次電池(LIB)の市場規模が急拡大している。電動車(xEV)の普及がLIBへの投資を活発化し、年産能力がGWh級の大規模工場「ギガファクトリー」の計画が相次いでいる。市場拡大は今後も続き、2020年のxEV用LIBの出荷量は容量ベースで年間123GWhだったのに対し、30年にはその約10倍に当たる年間約1.2TWhが必要になる見通しだ。

 こうした中、世界の自動車メーカーと電池メーカーは連携を密にし、LIBに対して強固なサプライチェーンを築こうとしている。どのような連携が見られるのか。LIBの調査会社B3(東京・千代田)が作成した車載用LIBの統計を基に、世界の各自動車メーカーがxEVに搭載するLIBの供給元を明らかにしていく

* 本記事では、21年6月に都内で開催された旭化成 名誉フェローの吉野彰氏の講演会で配布されたB3作成の資料を、同社の許諾を得て掲載した。

Teslaや中国メーカーが大量購入

 まずは、自動車メーカー別に見たxEV用LIBの購入量(容量ベース)の推移を見てみよう(図1)。各自動車メーカーのLIB購入量の合計は、11年以降9年連続で右肩上がりを続けている。国・地域別に見ると、中国と米国の自動車メーカーのLIB購入量が突出して多い。

図1  xEV用LIB市場は中国とTeslaがけん引
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図1  xEV用LIB市場は中国とTeslaがけん引
世界の自動車メーカーによるxEV用LIB購入量の推移。日本メーカーを赤字、中国メーカーを青字、その他の国のメーカーを黒字で示した。中国メーカーは2018年ごろを境に急伸。2020年には約37GWhと全体の3分の1以上を占め、国別でトップとなった。Teslaは1社だけで約30GWhと全体の3分の1弱を占める。日本メーカーは約8GWhと全体の12分の1ほど。(出所:B3の資料に日経クロステックが加筆)

 中国は自動車メーカーの数が多い上に、年間のLIBの購入量が5GWhを上回る自動車メーカーが複数あるため、国・地域別で見ると最も多くのLIBを買っている。20年の購入量は年間約37GWhだ。中でも、中国・比亜迪(BYD)が約8GWh、中国・北京汽車 (BAIC)が約6GWh、中国・上海汽車集団(SAIC)が約3GWhと多い。その他にも、広州汽車集団(GAC)や重慶長安汽車(Changan)、安徽江淮汽車集団(JAC)、吉利汽車(Geely)などが1G~2GWhずつ購入している。なお、中国汽車工業協会によると、21年の1~10月の新エネルギー車〔電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)〕の販売台数は254万2000台で、20年同期の約2.8倍に当たる。21年も中国内のLIBの購入量が上昇したと考えられる。

 米国の自動車メーカーでは、米Tesla(テスラ)が圧倒的な量のLIBを購入している。20年実績では約30GWhだ。自動車メーカー別で見ると、2位のBYDに3倍以上の差を付けている。Tesla以外では、米General Motors(GM)や米Ford Motor(フォード・モーター)が名を連ねる。ただし、それぞれの購入量は数百M~2GWhほどで、Teslaと比較すると少量だ。

 欧州の自動車メーカーでは、欧州Stellantis(ステランティス)やドイツAudi(アウディ)、ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)、フランスRenault(ルノー)といった自動車メーカーが多くのLIBを購入している。それぞれ年間の購入量は1G~5GWh前後である。日本を除くその他の国・地域では、韓国・現代自動車(Hyundai Motor)の購入量が5GWhと多い。

 日本の自動車メーカーでは、最も購入量が多い日産自動車で6GWhほど。トヨタ自動車と三菱自動車、ホンダの購入量はそれぞれ1GWh以下である。日本の自動車メーカーにおける年間のLIB購入量を合計しても約8GWhだ。他の国・地域の自動車メーカーと比較して少量なのは、日本の自動車メーカーが生産するxEVの主流が、1台当たりの電池積載量が少ないハイブリッド車(HEV)のため。米国や欧州、中国では、電池の積載量が多いEVの販売台数が日本に比べて多く、その分LIBの購入量も増えている。従って、LIBの出荷量(供給量)とxEVの台数規模は単純には比例しない。

パナ、LG、CATLが世界の三強を形成

 各電池メーカーで見たxEV用LIBの供給量の推移を示したのが図2だ。21年のデータは予測値となっている。21年におけるxEV用LIBの供給量の総和は約195GWhと、20年から約1.5倍に伸びる見通しだ。

図2 日本の電池メーカーではパナソニックが健闘
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図2 日本の電池メーカーではパナソニックが健闘
世界の電池メーカーにおけるxEV用LIBの供給実績の推移。日本メーカーを赤字、中国メーカーを青字、韓国メーカーを緑字で示した。21年予想では日本と中国、韓国の3カ国のみで全体のほぼ100%を占める。中でも中国国内で圧倒的なシェアを誇るCATL、Teslaを顧客とするパナソニック、同じくTeslaや中国の自動車メーカーに供給するLG Energy Solutionが大量の電池を出荷している。(出所:B3の資料に日経クロステックが加筆)

 LIBの製造はアジア企業が強く、日中韓の3カ国のメーカーで市場全体のほぼ100%を占める。21年の予測では、日本勢ではTeslaを大口の顧客としているパナソニックが約40GWhと最も多く、中韓では中国・寧徳時代新能源科技(CATL)が約43GWh、韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)が約50GWhとなった。

 CATLは中国国内のEVの増加を背景に、18年ごろから生産量が急拡大した。LG Energy Solutionも、従来はパナソニックと独占契約を結んでいたTeslaに19年からLIBの供給を開始。以降、供給量が急激に伸び、20年から2年連続でxEV用LIBの供給量でトップになるもようだ。

 4位以降は、韓国SK Innovation(SKイノベーション)が約13GWh、韓国Samsung SDI(サムスンSDI)が約13GWh、BYDが約10GWhと、中韓のメーカーが続く(それぞれ21年のデータ)。中国系のエンビジョンAESCジャパン(神奈川県座間市)は約6GWhで7位に名を連ねている。