電動車(xEV)の世界的な販売台数の急伸にともない、リチウムイオン2次電池(LIB)の部材メーカーも増産を急いでいる。正極材料大手の住友金属鉱山は、470億円をかけて生産設備の増強を実施。2027年度までに、現在の月産約5000トン(t)体制から1万t体制に拡大する。セパレーター大手の旭化成も、生産能力増強に向けて300億円を投じる予定だ。
LIBの主な部材は、電極に使う正極材料と負極材料、両電極を絶縁するセパレーター、リチウムイオンを伝導する電解液である。これらを「主要4部材」と呼ぶ。サプライチェーン編で見た通り、車載用LIBではアジア系の電池メーカーが“群雄割拠”している状態だ。では、主要4部材はどうか。LIBの調査会社B3(東京・千代田)が作成した統計を基に、シェアを明らかにしていく*。
LIB部材もアジアがリード
正極材料は、多くのサプライヤーがシェアを分け合っている。20年のトップはベルギーの素材大手Umicore(ユミコア)だが、それでも市場全体の8%だ。同社が開発する正極材料はニッケル・マンガン・コバルト(NMC)系。主な顧客は韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)である。
日本メーカーでは、日亜化学工業が7%で2位、住友金属鉱山が同じく7%(整数の百分率では同率だが小数点以下で差異がある)の僅差で4位にランクインしている。日亜化学工業はNMC系やコバルト酸リチウム(LCO)、マンガン酸リチウム(LMO)といった正極材を生産している。住友金属鉱山は、主にハイニッケル系のNMCやニッケル・コバルト・アルミニウム(NCA)系正極材を生産し、トヨタ自動車やパナソニックなどに供給している。トヨタ自動車がハイブリッド車(HEV)「ヤリス」で使っているほか、米Tesla(テスラ)も車載用LIBに使用しているとみられる。
正極材では、全体として中国メーカーが占める割合が高い。中国・厦門タングステン(Xiamen Tungsten)が7%で3位に入る他、中国・杉杉能源(Hunan Shanshan)が5%、中国・容百科技(Ronbay)が5%、中国・当昇科技(Beijing Easpring)が4%、中国・振華新材料(Zhenhua)が4%で名を連ねる。その他、韓国L&F(4%)や韓国Ecopro(エコプロ、3%)もランクインするなど、アジア企業で半数を占めている。
続いて、負極材を見ていこう。首位は中国・貝特瑞新能源材料(BTR New Material、貝特瑞)で18%。2位には昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)が12%でランクインした。同社の負極材は人造黒鉛系で、トヨタ自動車のHEV「アクア」の車載用LIBなどで採用されている。
3位以降は、中国・杉杉集団(Shanshan group)が10%、韓国POSCO Chemtech(ポスコケムテック)が9%、中国・江西紫宸(Zichen)が8%、中国・凱金能源(Kaijin)が7%と、中韓メーカーが6位まで並ぶ。そして、7位には三菱ケミカルがランクインした。三菱ケミカルは、天然黒鉛系と人造黒鉛系の2種類のラインアップがある。