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ビル内を警備する自律移動型のロボットが、オフィスビルのエレベーター扉前で立ち往生。乗客の進路をふさぐトラブルが発生した。エレベーターはロボット専用運転で本来はかご内に乗客はいないはずだった。しかし、ロボットのメーカーらは「乗客がいるのは想定内だった」と話す。

 トラブルが発生したのは2021年11月21日。場所は、東京都港区にある複合施設「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」(以下、竹芝タワー)の1階エレベーターホールだ*1

*1 竹芝タワーは、2020年9月14日に開業した最新鋭ビルで、積極的なスマートビル化に取り組んでいる。例えば、ビル共用部や店舗に約1000個のセンサーなどIoT(Internet of Things)機器を設置。ミリ波レーダーやカメラから収集したデータを分析し、混雑状況を数値化してビル内の電子掲示板に表示するなどしている。

 竹芝タワーは、ビル内を警備する自律移動型のロボットとして、SEQSENSE(シークセンス、東京・千代田)が開発した「SQ-2」(図1)を導入していた*2。SQ-2は、竹芝タワーが採用していた三菱電機のビル管理向けIoTプラットフォーム 「Ville-feuille(ヴィルフィーユ)」と連携。ヴィルフィーユが無人と判断して、ロボット専用運転に切り替えたエレベーターに乗り込んでフロアを移動できる*3

図1 SEQSENSEが開発したロボットSQ-2
図1 SEQSENSEが開発したロボットSQ-2
全高1300mm。重量65kg。稼働時間は6時間。LTEでSEQSENSEのサーバーと接続する。(出所: 日経ものづくり)
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*2 SQ-2は、頭部に搭載したLiDAR(3次元レーザーレーダー)を使って、移動経路に沿って周囲の3Dマップを作成。マップ内における自らの位置を把握し、壁や柱、障害物などを避けながらガイドなしで自律移動する。フロア間移動できる警備ロボットなら、各階に警備ロボットを配置する必要がなく、効率的な警備態勢を整備できる。
*3 エレベーター専用運転になると、かご内の各種ボタンは全て無効になる。他階から呼び出しても反応しなくなり、かごはSQ-2が呼び出した階へと移動する。

 ヴィルフィーユが無人と判断するのは、行き先ボタンが押されておらず、行き先階が指定されていない状態だ。そのタイミングで巡回中のSQ-2からエレベーターに乗る要求が届くと、エレベーターをロボット専用運転に切り替える。

 トラブルが発生した11月21日も、1台のSQ-2がフロア間移動のためにエレベーターの扉前でかごの到着を待ち構えていた。しかし、扉が開くとかご内には足の不自由な男性1人と、その男性の両脇を抱えるようにして介助に当たっている女性2人がいた。

無人のはずのかご内に3人の乗客

 大学教員で映像制作などを手掛ける武田圭史氏は、たまたまSQ-2と3人の乗客とが「押し問答」する現場に居合わせ、その様子をスマートフォンで撮影した*4。その映像を基に、トラブル発生時の様子をみてみる(図2)。

*4 映像制作を手掛ける武田氏はトラブル発生前から、「映像作品のネタになるのではないか」とSQ-2の動きをスマートフォンで撮影していた。
(a)
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(c)
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図2 トラブルの経緯
(a)警備ロボットの「SQ-2」がフロア間を移動するため、エレベーターに乗ろうと待機。(b)かごが到着して扉が開くと、本来はロボット専用運転で無人のはずのかご内に、足の不自由な男性1人と、介助者が2人いた。(c)ロボット専用運転と認識しているロボットはかご内へ移動。(d)ロボットはエレベーターの扉の間で立ち往生。足の不自由な男性を置いて介護者だけ出るわけにもいかない。荷物だけでも出そうとするが、かご内の人とエレベーター、見守っている背後の人たちに囲まれてロボットは停止状態になった。(出所:武田圭史)

 1階エレベーターの扉前でSQ-2が待機していたのは午後3時40分ごろ。SQ-2のスピーカーからは、「こちらのエレベーターはロボット専用運転です。ロボット以外の操作は受け付けませんのでご注意ください」とのアナウンスが流れている。

 扉が開くと、全高1300mmのSQ-2を前にたじろいだ様子の3人の乗客がいる。それでもSQ-2はかご内に移動を始め、扉のレール上で止まってしまう。女性の1人が「ロボットがいるので降りられない」と周囲に訴える。SQ-2とかごの間は1人なら通れそうだが、足の不自由な男性を抱えているので出られない。

 扉が開いてから約1分後、見かねた武田氏が乗客を助けようとかごに接近する。同氏は、防災センターに連絡を入れるためのボタンに気付き、防災センターを呼び出すが応答がない。

 扉が開いてから約1分30秒後、SQ-2のスピーカーを通して、防災センターからの「ロボットから離れてください」という指示が聞こえる。武田氏は「ロボットが動かないので降りられない。足の不自由な人が乗っている」と訴える。

 映像に残っているのはここまで。武田氏によると、一向に警備員が姿を見せないのに業を煮やした同氏が、動かないSQ-2を抱きかかえるようにしてかごから離した。この後、乗客3人はかごから出られたという*5

*5 武田氏の記憶によると、警備員が現地に姿を見せたのは3人の乗客が降車してから2、3分後だったという。