三菱電機による新たな性能不正が発覚した。業務用エアコンの室外機の騒音値を実力値よりも低く抑え、カタログ値に記載して販売していたことが日経クロステックの調べで分かった。業務用エアコンは室内機と室外機で構成される。同社では既に室内機の騒音値偽装が明るみに出ているが、室外機でも同様の問題を抱えていることになる。
騒音不正が発覚した製品は、同社が2010年に発売した「シティマルチY E eco〈高COPタイプ〉」シリーズの10馬力(定格冷房能力28kW)製品「PUHY-EP280CM-E3」(以下、10年モデル)。三菱電機はカタログに「60dB」と記したが、技術的に見て実力値は「63dB」である可能性が高い。
騒音を3dB下げる新型ファンガードを開発
その根拠は、新型ファンガードにある。ファンガードは、室外機のファン(プロペラファン)を覆う樹脂(ポリプロピレン)製の円筒状カバー。三菱電機は、上端の直径が大きくなる形状(広がり管)にすることでディフューザー機能を持たせた新型ファンガードを開発した。ディフューザーを使うと、物理的に(ベルヌーイの定理*から)風の速度が落ち、圧力が増加する。圧力が上がると、結果的にファンの回転数を下げられる。
なぜなら、ファンは昇圧装置だからだ。ファンの入り口は負圧になっているのに対し、出口は大気だからゲージ圧(絶対圧力と大気圧の差)がゼロ。すなわち、ファンはマイナスの静圧からゼロの静圧にまで昇圧しなければならない。だが、ディフューザーによって速度を落として圧力を高めた分、ファンの入り口と出口の静圧の差は小さくなる。すると、ファンが負わなければならない昇圧分(ファンの抵抗)が小さくなる。結果、ファンの回転数を下げることができ、室外機の省エネ性能の向上と騒音の低減が同時に可能になるという仕組みだ。
この新型ファンガードの騒音削減効果は、実に3dBと大きい。その優秀さは、開発後に三菱電機が全機種に展開し、今なお採用し続けていることで証明されている。その大きな効果を知った競合企業も複数社がまねをして導入したほどだ。
三菱電機はこの新型ファンガードを2011年に発売した製品に初めて搭載した。ということは、同年の製品は騒音値が下がってしかるべきだ。ところが、実際にはそうなっていない。