KDDI総合研究所(埼玉県ふじみ野市)と埼玉医科大学は、健康医療分野におけるデータ流通プラットフォームを構築し、2022年4月以降に実証研究を始める。KDDI総合研究所が開発したIoT(Internet of Things)データ流通プラットフォームを使い、利用者が健康医療情報の共有先を自分で選んだり、後から自分の同意内容を柔軟に変更できたりする仕組みを整える。KDDI総合研究所が開発したIoTデータ流通プラットフォームを健康医療分野に応用するのはこれが初めてだ。
IoT医療機器や医療機関などから得る健康医療情報を自分自身が保有し、どのように活用するかを決める仕組みを作る。同意を得て提供された情報は医師が診療の参考にしたり、企業が新しい薬や医療機器、ヘルスケアサービスの開発に生かしたり、政府が政策決定などに参照したりできる。「海外ではリアルワールドデータ(日常の臨床現場で得られる医療関連のデータ)の利活用が進んでいるが、日本は遅れている。国内でインフラを作りながら、データを活用するモデルを示したい」と埼玉医科大学総合医療センター 内分泌・糖尿病内科の泉田欣彦教授は話す。
実証研究では、妊娠糖尿病の患者を対象にしたアプリを開発する。アプリには本人が血糖値や体重、血圧、歩数や食事内容などの情報を保存する。医療機関が患者に提供した検査結果を患者自身が入力することもできる。
妊娠糖尿病患者は、定期的に妊婦健診を受ける産科以外にも専門医のいる埼玉医科大学総合医療センターのような総合病院、患者の通いやすい近所の内科クリニックなど様々な医療機関に通院する場合がある。患者に対応する医療機関が検査結果などを確認できると、診療に生かしやすいという。
健康医療情報をどの医療機関に共有するかなどの同意を得る仕組みとして、KDDI総合研究所が開発したシステム「PPM(Privacy Preference Manager)」を実装する。PPMはデータの持ち主の同意に基づき、第三者のアプリやシステムなどにデータを転送するかどうかを制御するものだ。利用者がアプリの個人設定をする際、自分の情報を共有する医療機関や情報項目などを選ぶ仕様にする予定だという。